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咎人達の独り言。
ジェイドの独り言。 ディストの独り言。 ピオニーの独り言。 ヴァンの独り言。アニスの独り言。 |
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ジェイドの独り言。
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昔の私に遇ったなら、殺してやりたい、と今でも思っています。 口に出して言う事は、しませんが。 ルーアッシュにも言われました。 彼を見て、ルーアッシュが言ったその言葉を実感しました。 彼は、ルークは、そしてイオン様も生き残ったほかのイオンレプリカたちも、私の罪の結晶である事には変わりありません。 もし昔の私を殺す事に成功したなら、彼らはこの世に存在しなくなるのでしょう。 私の罪は消えるのです。 ですが。 そんなことはありえない。 罪の結晶は、彼らはそこに居ます。 体の全てが第七音素で作られたレプリカ。 ですがオリジナルとは違う意思を持ち、生きています。 初めのころのルークは酷い物だと思いましたが――アクゼリュス崩落のあと、アラミス湧水洞で再び遇った頃には、彼は変わろうとしていました。 レプリカでも、この世界で生かされるのではなく、生きようとしていました。 過去の私を殺したい。 罪の結晶である彼らにそう告げることは、生きようとしている彼らそのものを否定することになるのでしょう。 イオン様も、どうやら兄弟とも言えるのかもしれない生き残ったイオンレプリカたちの存在を知り、変わり始めているようでした。 導師イオンとして求められるようにあるのではなく、己でありたい、とそう思うようになってきているようです。 過去のルークのままだったのであれば恐らく私は躊躇いなく過去の自分を殺したい、と彼の前で言葉にしたでしょう。 何を考える事も無く。 だから私はネフリーに人の心がわからない、悪魔のような人、などと言われるのでしょうね。 私は私なりに愛していると思うのですが。 兄さんは人の心がわからない。 ネフリーにはそういわれました。 貴方は他人を情によって理解できない。 ルーアッシュにはそういわれました。 人の心が分らない、と言われるよりはそちらのほうがしっくりときました。 私は他人を心情によって理解しているのではなく、情報によって理解する。 誰かが悲しむ同じ事が自分の上に起っても多くのことは私にとって悲しい事ではない。 悲しみを感じる事ができない。 だから曰く共感するということが出来ない。 だから周囲を観察し、どんな人間がどんな事が起これば悲しんでいるのかを観察し、状況に合わせてそれを擬態する。 それは共感とはいわないでしょうね。 私が、過去の私を殺したいと、そう願うように。そのもしもを夢想するように思うことがあります。 もし私がフォミクリーを研究しなかったら。 あるいはネビリム先生を殺したあの日。 第七音素の実験に失敗したあのときに、私が死んでいたなら、と。 人間のレプリカを作ったのはあの後が初めてでした。 人間が初めてだったというだけで、私はすでにフォミクリーは開発していました。 だから、もしあの場でネビリム先生が死なず私が死んでいたなら、どうなっていただろうかと、そう思うこともあります。 サフィールは私の開発したフォミクリーを機械化するほどの頭脳を持っています。 認めるのは癪ですがね。 そして何故か私に対して強い執着を持っていました。 あそこまでやったら普通は嫌われると思うのですが本当に不思議ですねぇ。 もし、わたしがあの時に死んでいたら。 そう考える中では、ディストが私のレプリカを作ったかもしれません。 初めに生まれた人のレプリカはネビリム先生ではなく、私のレプリカであったかもしれない。 ネビリム先生ならディストを止めてくれないだろうかと思いますが、どうでしょうか。 私が居なくても、マルクトはフォミクリーと超振動についての研究を始めるでしょう。 ホドで。 あるいは私の立場に立つのはディストなのかもしれません。 ピオニーが何か抵抗をするかもしれませんが、フォミクリーの研究は皇帝直々の物。 王位の可能性は薄いと目されていたピオニーに、一体何が出来たでしょう。 そしてやはりホドは落ちるのでしょう。 ルークやイオン様たちも生み出されるでしょう。 あるいは、私が生まれなかったら。 何時だったか、ルーアッシュが言いました。 私が作らなくても誰かが作る、と、 私が作らなくても、いずれは生まれる技術であったと。 ですが、それが世界の終わりに間に合うかどうかは別の話です。 私が生まれなくても、第七音素術師が二人居れば超振動は起こせます。 ホドは落ちるでしょう。 そしてルーク――アッシュはそのままバチカルで生き、何も知らされずにアクゼリュスに赴き預言通りに死ぬでしょう。 キムラスカ繁栄の生贄として。 フォミクリーを憎まなかったヴァンが、果たしてそこまで預言を憎むだろうか。 憎んだところでフォミクリー無くどうやって預言を覆そうとするのだろうか。 ダアトで上り詰めたとしても、そこから先は? 何も起らず預言はなされ、ルーアッシュの語るようにマルクトは滅びキムラスカは繁栄を得て、やがては星共々に滅びていくのだろうか。 少なくとも私は私を好きではありません。 自分を殺したいと本気で願うほどには。 ですがこれも咎人の戯言です。 罪を犯した人間が、罪を犯す前に戻りたいといってもなにも、変わりません。 ならばやること、やれる事はただ一つしかない。 贖罪を。 生み出されたレプリカたちに。 これまで犠牲にしてきた人々に。 私は謝罪を述べません。 それですら傲慢でしょう。 それでも。 |
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ディストの独り言。
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知っていましたよ、本当は。ずっと昔に。 ジェイドよりも早く、知っていましたよ。 死んだ人間は蘇らない、その程度の事。 私は譜業を作ります。 喋る譜業を開発し、そのプログラムを組みます。 データを蓄積し、バージョンアップをする。それは擬似的に成長と言えるのかもしれません。 語彙が増え、行動の幅が増え、表現の幅が増え、私の作る譜業は金属の体を持ちながらもやがてみょうな人間らしさまでにじみ出るようになりました。 壊されても、壊しても、データのバックアップがあれば新しいボディに映して以前と変わらないように違うボディをもつ同一の個体として復活できます。 ですが、私は作る者だからこそ考える事がありました。 同じ記憶、データを持つそれは、果たして本当に同一なのか、と。 データを引き継げばすぐに以前のように動きます。 ですがその後の環境によって集積される経験値――データは違ってくるでしょう。 譜業を作るのと同じような感覚でレプリカに刷り込む知識のプログラムも作りました。 ですが、同じ知識をインストールしても、あの七人のレプリカたちはものの見事に違う個性を開花させた。 シンクなどはその代表例でしょう。 シンクもオリジナルイオンも生意気なクソガキでしたが、ですが誰一人、本当の意味ではオリジナルイオンと重なる事はありませんでした。 アッシュとは違い、イオン様は本人の協力も多少ありましたので記憶のデータ化を図ったこともあります。 ほとんど無理でした。 それでもレプリカに刷り込むデータの作成には大いに貢献してくださいましたが。 本人の協力を得られたイオン様でさえこの程度。 ましてやレプリカデータを取る事が精一杯だったネビリム先生とあればいったいどのような物か。 違うことなど分っていました。 死者復活などありえないと知っていました。 例え肉体を復元し、そこに完全な記憶のデータを引き継いだとして――果たして同一であるのか。 経験を持たない新しい体と記憶を元に構成される擬似的な成長を遂げた精神。 そんなもので果たしてあのネビリム先生と同じと、いえるのか。 見ない振りをしてきた事実は、レプリカを作れば作るほど私に叩きつけられました。 そのたびにむきになって否定してきた。 研究者としての命題、とも言えるかもしれませんね。 まあ所詮私の代では不可能でしょうが。 機械に魂はありません。 そもそも霊魂なる物が本当に存在するのか、私はどちらかと言えば否定的ですが、その存在を全く否定するわけでもありません。 あっても無くてもどうでもいいとは思っています。 いつか存在が証明されるか、完全に否定されるかする日が来るのかも知れませんが、今は知ったこっちゃないですね。 肉体、精神、そしてあるとするなら魂。 その全てが兼ね供わっての――人間でしょう。 洟垂れだのバカだの阿呆だの、皆勝手を言いますがね、私だって何も考えていないわけじゃないんですよ。 何も知らないわけではありません。 ただ、見たくなかっただけです。 あのジェイドが諦めるのを。 その諦めによってジェイドの側から私の居場所がなくなることを。 死者はよみがえらない。 少なくとも、フォミクリーを極めても今の技術では不可能であると、知っていました。 それでも人間のレプリカと言うその禁忌に手を出したのは――知っていたからですよ。 そうすることでジェイドの一番の近くに行くことが出来ると。 人の情を解さないジェイドは私にとってあこがれでした。 ジェイドはジェイド成りに感情も有るし、心も有ると思うのですがどうやら普遍的な心の持ち主ではないようでした。 幼いときからそのあり方が、私をひきつけてなりませんでした。 認める力が無かったことが、恐らく私の最大の罪でしょう。 |
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ピオニーの独り言。
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為政者の手ってのは黒かったり赤かったり泥にまみれてたり――まあ相場は決まってると思うが、まあなんだったんだろうなとはおもう。 結局預言に振り回されてここまできた。 預言が言うからケテルブルクに軟禁された。 預言のためにネフリーと結婚できなかった。 まあ結局、預言のとおりに皇帝になった。 皇帝になるまでなんも知らなかったんだぜ? ばっかだよなぁ〜〜。 全部全部、事が終わってから知った。 皇帝、っていやぁさ、一応この国の最高権力者だぜ? 政治の仕組みを知らない子供の目から見ればきっと世界は何でも俺の一存で決められるように思うんだろうな。 それが預言に振り回されて、好きな女には振られて、兄弟皆なくして、大切な領地を失って。 ルーアッシュが来たときは、怖かった。 俺がネフリーを好きだってことは知っている奴は知ってるがそう広まってる話じゃない。 独身の理由が初恋ってのは知っていても相手の事まで詳しく知っている奴はそう多くない。 それをピタリと当てられた。 そのほかにも第六譜石の内容、ホド生き残りのガルディオス家の遺児の存在、結果的には俺の即位の時期も知っていた。 あいつの言った事は大抵外れなかった。 外れてみた事はあいつの思い違いだったことが多かった。 まるで預言だった。 あいつ自身が。 その預言自身のようなあいつがその預言を覆すために手を貸せと言う。 体が震えた。 預言を、覆す。 本当に? できるのかそんなことが! 預言には苦い思いをしていた。 だが預言は――詠まれても俺たちには明かされない事も多い。 教団の都合のいいように隠されたり明かされたりする。 そのいい例が、あの第六譜石の内容だろう。 その譜石自身は遥か昔にユリアガ詠んだ物だ。 秘匿されたその内容を知る人間は今では多くない。 そこにはアクゼリュスから始まる――いや、キムラスカに生まれる聖なる焔の誕生から始まるマルクトの滅びとキムラスカの繁栄が詠まれていた。 知っている人間はいる。 だが当事者に知らされることはない預言。 もどかしいったらないぜ。 あいつは片っ端からそれを当てた。 確認は取れていないが、第七譜石の内容だってこの調子なら当たるだろう。 やっと、やっと預言を知ることが出来る。 抵抗する事ができる。 反逆する事ができる。 知っているのに対策も取るなっていうなら一体何のために預言を詠むんだって言うんだよな。 これでやっと始まる。 そう思った。 五年前にあいつが来てから娯楽が増えた。 仲間も増えた。 そして罪も増えた。 知らなければ仕方のなかったことが、それではすまなくなっていた。 アクゼリュスからの人民の避難だってそうだ。 大々的に行なわなかったのは、不用意にキムラスカを刺激する事を避けてのことだ。 そしてなにより教団との対立を避けてのことだった。 教団は信者も多く、それはまた世界各地に散っている。 マルクトの軍人にだって敬虔なローレライ教団の信者は多い。 知ったから避難させる事が、助ける事ができる民が居た。 だが知らなければ、それは俺の罪ではなかっただろう。 為政者は切り捨てる物と拾うものを選ばなければならない。 知ってるさ。 知らなくたって俺は何時だって選んできたんだ。 皮肉だよな。 知ったって結局この程度だ。 今まで預言が預言が、で済ませられた、習慣的に済ましてきた多くのことがそうとは言えなくなるだろう。 俺よりきっと多くを知っているんだろうあいつ――ルーアの姿を見ているとその時がなんとなく分る。 あいつは日常に預言を一切持ち込まない。 だから、通っちまうんだろうな。 そしてもうひとつは――あれだ。 あいつは為政者じゃない。 だけど俺以上に先を知り、話すか話さないか、対策を取るか採らないか、それによって犠牲になる人間のどれを拾いどれを切り捨てるか、悩んでいる。 暫定的な処置とは言えあいつはマルクトの国民ですらないんだ。 それなのにマルクト全域どころかオールドラント全域での事態に頭を悩ませている。 今まででどちらの国にも関わらずに生きてきたらしいからな。 その上随分平和なところだったらしい。 だからだろう。 俺のようにマルクトのため、国のため、自分の民のためといってそれ以外を切り捨てる事も出来ない。 完全な第三者であるなら良かったのかもしれんが、今では第三者と言うにも不完全な立場だ。 そうやって悩んで、苦しんでいるのを見るとなんでだろうなぁ。 俺は救われるような気がするんだ。 皇帝の孤独を俺は感じている。 あいつは皇帝じゃないけど孤独を感じている。 多分、そのせいだろうか。 他人の苦しみを見て溜飲を下げているみたいでなんだいい気分じゃないが、救われているのも確かだ。 構えた対応をしないから気軽なんだよな。 何時行っても拒まれない。 まあ「皇帝って意外と暇なのね」くらいの嫌味は言われるがジェイドと比べると甘口だな。 |
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ヴァンの独り言。
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ヴァンデスデルカ。 そう呼ばれなくなった日々が始まってどれくらいの月日が流れただろうか。 初めのころは必死に新しい環境と人に馴れようとしていた心と体も、時間に余裕が出来るようになるとさまざまな事を考え出した。 私の一族は始祖ユリアを敬って来た。 始祖ユリアを拝し、そのユリアの詠んだ第七預言の譜石をその言葉に従って二千年の間秘匿し、守り続けて来た。 だがユリアは、我等に報いる事は無かった。 ホドは沈み主たるガルディオスの一族も失い、領地も民も全て失った。 預言。 預言、預言。 預言預言預言!! 役に立たないのなら一体なんだと言うのだ。 詠んでも詠まなくても預言はこの世に存在し、人の行動を縛る。 詠んだ人間の手と解釈によって都合のいいように伝えられ、当初の意志はゆがみ、逆らわず従順にしたがい死ねと言うなら死ぬのが美徳とうたわれる。 人が居る限り預言が失われる事はない。 人が預言から開放されるには人を滅ぼすしか道はない。 世界を己自身の預言を背負わないレプリカに入れ替えて、その後に解離を促す第七音意識集合体であるローレライを滅ぼし第七音素を激減させ、預言そのものを滅ぼす。 そう私は決めた。 その過程でどれほどの悪事に手を染めようと構わない。 どうせ世界は滅びるのだ。 ほうっておけば、預言のとおりに。 ならば何をして構う物か。 後世――そんな物があるのなら、私は英雄となるかそれとも世紀の大悪党として記される事になるだろう。 全ての計画を成し遂げレプリカ世界の始祖となり名を残すか、あるいは大地の崩落とレプリカへの転換を目論み世界を混乱に陥れた大悪党。 この計画を進めるのなら、そのどちらかでになるしかないだろう。 もはや普通である事など許されない。 導師エベノスが崩御し次代に付く子供は未来のない導師だった。 子供ながらに高い能力ゆえに預言で己の未来を知ってしまったのだろう。 斜に構えて世界を見ていた。 その導師をこちら側に取り込む事から、私の計画は動き出した。 我が子と妻を預言に奪われた男。 預言にたった一人の肉親であった弟を奪われた女。 獣と意思を交わし獣を使う娘。 我が預言への反逆の狼煙として生まれ捨てられた淵からやって来たレプリカ。 同志を集め軍部を掌握し預言狂いのモースの扱いももはや容易い。 敵対したなら厄介となったであろうオリジナルイオンも死に、レプリカで代用した導師に力は無い。 ファブレの屋敷に送り込んだ聖なる焔のまがい物はいい具合に愚かになり、そのオリジナルも我が手中だ。 私は世界に闘いを挑む。 |
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アニスの独り言。
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アクゼリュスが崩落するのを私は黙ってみていた。 私も知っていた。 大佐も知っていた。 イオン様に変装していたフローリアンも知っていた。 けどとめなかった。 表面的な事実だけを見るのなら、やっぱり罪はルークにあるように見えると思う。 一番簡単な構図だもん。 ルークがルークの力でアクゼリュスを落としたって言うのが。 けど、咎を受けるべき罪人は誰かっていうなら、みんなだと思う。 きっと私たち以外には分らない。 私はもちろん、知っていた大佐やフローリアン。 それだけじゃなくて、ナタリアもティアもガイも、止めることはできなくても止める方向に働きかけることは出来たと思う。 全くそれをしなかったって言う事は、落ちるのを黙ってみていたのと同じだとおもう。 それは消極的な崩壊の手助け、かな。 私たちみんな罪人。 みんな分ってる。 だって誰も何も言わないもん。 アクゼリュス崩落っていう、罪が大きすぎて何もいえないんだよ。 だからかな。 ただ否定ばかりするルークが気に障ってしょうがなかった。 ルークだけが悪いなんていってないじゃん。 ルーク“も”悪いけど、わたしたち“も”悪い。 のにさー……。 ダアトで再会した時のあの変わりよう、なにあれ。 タルタロスじゃずっと否定ばかりしていたのに、今度は全面肯定どころか全部自分ひとりの罪みたいに思っちゃってさ。 あーもう。ほんっと加減を知らないんだから。 あっちからこっちに両極端。 見ていられないって! レプリカでもなんでもいいじゃん。 ルークはルークでしょ! まだ叫んでやれない私も嫌い。 |