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つかの間の???
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空は晴天風もいい。 絶好の異世界旅行日和だ。 封印されているリノアに挨拶をして、今日異世界に渡るメンバーが円陣を組んだ。 それを見守る居残り組みのメンバーの目にも不安は無い。 「さーって、今回はどんな世界に行けるのかしらね」 「あんまり〜、怖いことないとええね〜〜」 「どんな世界でもいいけどさ〜、リノアを助けられる何かがあるといいよね〜〜」 気合を入れるキリエの後に、口調の似てきた二人が続く。 アーヴァインがセルフィを真似ているのは無意識、なのだろう。 その移り変わりがあまりに自然でキリエも随分後になるまで気が付かなかったのだが、生まれた世界でFF8のソフトを繰り返しプレイして行くうちに初期のアーヴァインの口調に違和感を覚えて気が付いた。 アーヴァインがもともとはセルフィと似た喋り方をしていなかった事に。 それこそキザ男とでも言うかのような、キザったらしい喋り方をしていた事に。 「準備はいいのか」 「スコール……ここに来て今更忘れ物、とか言われても、ね」 「だいたいキリエが作ったポーチさえ持ってりゃ心配ないだろ?」 寡黙に尋ねるスコールに、キスティスが腕を組んで吐息を零す。それに離れたところでシャドウボクシングをしていたゼルが手を止めて言葉を重ねた。 床を鳴らして歩み寄ってくる背後で、封印施設の扉が開き、一人息を切らせて駆け込んでくる人がある。 「お、遅れました……」 はぁ、はぁ、と早まる呼吸と一緒に歩幅も整えて歩み寄ってくるのはフィールだ。 今日の旅立ちは三月も前から計画されていたので本来なら遅れるなどありえない事態とも言えた。 だが今日の日を空けるために仕事を切り詰めていたフィール。やってこない事を不審に思ったキスティスが電話を掛けたところ、どうやら寝坊をしていたらしい。 あまり同情の余地は無いが、居残り組みはその心情が良くわかる。 旅立つ人間は向こうでの不慮の事態に備えるために可能な限り体調も精神も万全の状態に整えておいてからこの日に挑む。 だがそのしわ寄せはきちんと周囲にいっていた。 居残り組みの顔には疲れが滲んでいる。 彼らには念具と言う強力な味方があるが――よっぽど必要としない限り彼らはそれを使用しない。 特に意味があるわけではなく、この場合はなんとなく、と言う感じだろう。 一時期は薬に頼ってみたこともあったが、体は健全でも心が日々不健全になっていくのが実感できていた。 疲れも人のサイクルの一つであると言うことだろう。 「これで全員揃ったな」 ぐるりと見回して言うスコールに、みな黙って頷き返す。 旅立ちには常に不安と希望がそこにある。 行く先は未知なる世界だ。何が起きるかわからない。 互いの実力は分かっている。それほど不安ではないとは言え、やはりいつでも旅立つときにはこれが最後になるかもしれないと思う。 冷却ファンやモーターの機械音の響く中、互いの顔を焼き付けるようにかれらは眼差しを交わす。やがてその顔には誰からともなく薄っすらとした笑みが浮かんだ。 「それじゃセルフィ・ティルミット、いちきます!!」 足をそろえたセルフィが、Seed式の敬礼をする。 「アーヴァイン・キニアス、いってきま〜〜す!」 帽子を直してから、アーヴァインも敬礼をした。 「御堂霧枝。行ってきます」 彼らの仲間となれたことを誇らしく、キリエもSeed式の敬礼をした。 「おう、気をつけていってこいよ」 「ええ。体には気をつけるのよ?」 「……頼んだ」 「頑張ってくださいね」 残る仲間たちが次々と答礼を返した。 年を経てやんちゃな輝きの消えないゼル。 精神的な充足も得たのかより美しさに磨きがかかったキスティスが柔らかく微笑む。 たった一言の言葉に対して内心では何倍も何かを考えているのだろうスコール。 以前より凛々しさの増したフィール。 行く者たちは一人ひとりと眼差しを交わし、最後にリノアの事を見る。 「いってくるね〜〜、リノア」 「リノア〜〜、ちょ〜っと行ってくるよ」 「行ってきます、リノア」 いって彼らは目を閉じた。 道を開く者、力を貸す者、全体をまとめる者、それぞれに多少の得意分野がある。 異世界への門を開くための条件は同じ念を複数で共有するための制約を交わした仲間が三人。 エデンとディアボロスをはじめとした、全十六種のGF達の中からある程度以上の力量となる数体。 そして最後に――覚悟。 未知の世界へ導く力は彼らを必ず争いの中へと突き落とす。 剣戟の嵐。砲弾の嵐。異能の力のぶつかり合いの中、さまざまだ。 それを潜り抜けて生き抜く覚悟。 それが決まれば、後は一言呟けばいい。 「開け【騒乱への道よ】」 そして訪れる浮遊感。重力から切り離され、世界から切り離される。 そして新たなそれを感じたときには速やかに眼を開け。 そこは争いの中、新たなる世界だ。 |