時を越えて
「心やさしいハイネルの遺志を汚すものは許さない。
此処はハイネルの夢見た楽園。先生が受け継ぎ、私たちが護ってゆく場所。
ハイネル、まだ此処に居るのなら、この地に住まう彼等を愛しているなら一秒でもいい、応えて!!
私を、クリプスへ繋いで!!」
ぼんやりと光る核識の座。
そのやさしい色は、先生と同じ色。
(だれも……)
その声は、誰の耳にもゆるぎなく届いた。
(失わせない……)
同じ色、同じ形。
かつて先生から聞いていた。
核識となったハイネルと、先生の心は同じ色、同じ形。
先生とハイネルは、同じ心を持っている。
とてもやさしくて、暖かい。
護りたい、大切なものを護るためなら絶対すら覆すほどの強固な意志。
瞬間、体の中で何かが繋がった。
カスラのディエルゴから、私に回線が切り替えられる。
「ウゴォォォオォ――クリプスがぁ、、魔力……がぁぁああ!!」
傷付いた体を癒し切れずにカスラのディエルゴが声をあげた。
「来て、フォイアルディア!!」
手を掲げて掴み取った。
私の心の剣。
その燃えるような輝きは、そのまま今の私の心。
負けない意思。
こんな奴に、負けない。
こんな奴に、楽園の平穏は乱させない。
輝く刀身に、ありったけの魔力を注ぎ込んだ。
目を開けていられないほど眩しい輝きを放つ剣。
私はそれを、楽園の敵に振り下ろした。
「消えてぇええ――!!」
カッと光が降り注ぎ、そして何も見えなくなった。
瞼を開く。
と同時に体の変化が解けた。
目の前には清い気配を取り戻した核識の座。
剣とクリプスを通じて感じる、微かな残滓のようなハイネルの心。
先生を思い出して、ほんのりと心が温かくなる。
やわらかく唇に笑みが登った。
振り返る。
眼を瞬かせて、彼らが居た。
この島のお客様。
心の温かい人々。
人をやさしくする色々なものを持っている。
思いやる心、労わる心、信じる心。
でもきっと、先生のお人よしには敵わない。
運命すら変える力を持つという彼ら。
だけど、運命を変えられるのは彼らだけじゃない。
私たちにも、この意思がある限り、変えられる。
多くの人々が、笑って暮らせる世界を望むこの意思が、ある限り。
戻る
TOP