御堂霧枝の一人旅
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御堂霧枝の一人旅――1
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私の名前は御堂霧枝。こっち風にいい表せばキリエ・ミドウ。 バラムガーデン所属正Seed、内サウザンドを名乗るちょっと特殊な戦闘部隊の一員だ。 人類が既に魔物だらけの月を制覇し、宇宙にはコロニーが林立し火星の開発に手を伸ばしはじめている昨今としては頭の中身がローカルな人間だ。 エアバイクやエアカー、更に高度な医療技術や流体モニターに一般家庭にまで普及しまくっている立体ホログラフ。 エスタがガルバディアと共同で夢のナノマシンを開発したとかしないとか。 えー? ナノマシンって現実的には不可能とか言われてなかったっけ? と言うのが私の頭の中である。 サウザンド――千を持つ由来の一つでもある特殊な能力、『念』という特殊な力によって生み出してきた数々の夢の道具達もだんだんと科学の力によって夢じゃあなくなってきて希少価値が暴落していると感じる昨今でもある。 サウザンドの名を冠するSeed達はその念能力を使用して異世界にまで移動できる能力を身につけたがそれもやがては機械化されるのではないかとすら思う。 何名様異世界旅行ご一行ごあんな〜い! などと言う景色が当たり前になってくるのではないか、と時々そう思う。 それははそれで楽しそうではあるし、不安定な念なんかなくても異世界にいけるなら願ったり叶ったりである。 が実際はもうしばらく異世界渡りは念の独擅場だろうと思われた。 科学が今までは念や魔法でしか出来なかった分野を次々と侵食しているとは言え、まだまだ過去に作りだした物の中にはまだ世間様にはお目見えできないものや作ったはいいものの処分に困るような物などがどっさりとある。 処分、と言うよりは使い方に困るかもしれない。 捨てるには惜しいが不出来な代物と言うか。 それらの物を一通りまとめて放り込んだ二世紀は前のウェストポーチを装備して私はガーデンに与えられた自室のベッドの上で転がっていた。 捨てるのは惜しいが人に譲渡も出来ない代物であるが何処か使える場所は無いだろうかと考えるのは私の日課だ。 貧乏性だとは自覚している。 このポーチもやはり念製で、収納力は無限大、開閉は認証式で私にしか開けないようになっているしもし内部のものを求めようとしたらその認証を改竄できる能力者が必要になる。 もし除念によって認証を解除しようと思い行動すればその瞬間にただのポーチになって中身ごと行方不明と言う代物である。 ポーチを開いては閉じて、中身をころころともてあそびながらごろんと一度転がって私は今日の思考に区切りをつけた。 もうひとつ腰からぶら下がる旅行用に作った念具のポーチに手を触れる。 自然と顔が緩んだ。 明日から旅行だ。 異世界への旅行ではなく同一世界内での旅行だ。 普通列車に乗って船に乗って車を走らせチョコボの背に乗る。 何て素敵な旅だろう。 そう思うと心が浮き立ってくる。 えへへ、と私は人前ではできないような緩んだ笑い声をもらしてシーツに散らばしていた四つのビー玉を回収した手にぎゅっと力を籠めた。 旅行旅行! 異界旅行じゃなくて旅行なんだ! にへら、と更に笑みが深まった時、手の中に握っていた何かが熱を持ち自己主張を始める 握りしめた指の隙間から眩いばかりの白光が沸きあがる。 「んな、どうしたの!」 手のひらを開いて慌ててそれを確認する。 まあるい四つのビー玉は、エスタ、ヴェーン山脈から取れる希少なヴェーン水晶の中でも全く不純物の無い希少価値の高い物をものを加工して念具にした文珠の模造品だった。 これほどのものは二度と作れないと思ってお蔵入りさせた代物だった。 どうせ使うなら最大限に有効に使える場所で。 そうでなければ惜しすぎる、と貧乏人根性を発揮させて作製から長い間しまわれていたものだった。 四つの文珠に四つの文字。 そこに浮かび上がるのは―― 異・界・旅・行 「異界旅行ーー!!」 ちょっと待って! 私の明日からの旅行は? つか異世界って何処よ! 慌てた私は文珠の降下範囲から抜け出そうと慌ててそれを放り投げた。 だが失念していたがここは室内。 投げた文珠は壁にぶつかって跳ね返ってころころと私の足元にまで転がってきた。 眩い光に目も潰れんばかりなのにどうしてか文珠に浮かび上がった文字だけは良く見えた。 見たくないのに。 旅・行・異・界 「って、意味おんなじじゃん!!」 叫んだ時、私の視界は本当に白一色に覆われた。 光が収まった時には既に周りの空気が違っていた。 狭い室内とは違う流動する空気、つまり風というかむしろ踏ん張りを利かせて立っていないと吹き飛ばされそうな強風と強い排気ガスのようなにおいをを含んだ重たい空気。 目を開く。 うっかり足元を見て久しぶりにくらりと来た。 おっそろしく高い超絶高層建築の天辺、しかもその淵に立っていた。 いまさら現れる場所に目新しさも何もないがそれにしてもこれはドッキリだ。 「……あ、はは。文珠でも、異世界いけるんだね」 もちろん独り言に言葉を返してくる人間はいない。 「争乱に呼ばれないなら、こっちのほうが良いかもねぇ……」 それでも独り言を呟くのは自らの精神の安寧のためだ。 「どうしよう」 本音だ。 GFはセイレーンとカーバンクルのみ。 帰りたくても帰れない。 もし同じ方法で帰ろうとするのなら、同じだけの力を持つ文珠が必要になる。 作製には貴重な水晶と金銭。 しかも非常識なくらいの金銭が必要になる。 「……どうしよう」 ここが何処だか知らないが、帰ろうと思うならお金が必要である。 稼がねばなるまい。 なんとしてでも。 「とりあえず、降りようかな」 一人、呟く。 けど下を見て飛び降りるのは諦めた。 メガテン3のイケブクロマントラ軍本営ビルから飛び降りるより怖い。 あれはHPが1残るけど私はきっとゼロになる。 ふっと空を見て気持ち遠い目をしてからそっと背後に下がって屋上で階段を探す。 訳のわからない場所で莫大な金銭を稼ぎその上二度は作れないと思ったほどの極上の文珠を作るための極上の水晶球まで手に入れなければならない。 制約に金銭を使った私自身を怨みたかった。 しかも自分で稼いで自分で使うなら念具作製のための制約も書き換えなければならないだろう。 面倒ごとは山積みだった。 それでも私は体力的には全く平気だったけど、精神的には限りなく重たくなった足を動かしてとりあえず非常階段と書かれた扉を見つけて進んでみた。 ここ、どこだろう。 そう思う。 けどとりあえず街の中らしいことは確かであるからそれだけはありがたいかなと思った。 |
御堂霧枝の一人旅――2
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降りてみたらハンターハンターの世界だった。 何の冗談かと思ったけどそうじゃないらしい。 ちなみに私が現れた超高層建築物は天空闘技場の天辺だった。 あと十センチ前方に現れていたらこの世界に現れたとたんに墜落していた恐怖の出現位置である。 ハンターハンターの世界は知っている。 だが今回私は同一世界内での旅行に出かけるつもりだったのだ。 旅行用のポーチには一通り以上好き勝手に様々な物が入っているけどそれでもこの世界のお金は入れていない。 必要なかったからだ。 もちろん此方で以前に使っていた通帳も持ってきていない。 そもそも今はいつだ。 私たちがいなくなってからどれくらいの時間が経ったのだろうか。 天空闘技場を見上げて考えた。 この闘技場、改築でもされたんだろうか。 最後に見た時より妙に新しい気がした。 それにしても私の心には遣る瀬無い思いが募っていく。 せっかくの旅行が危機感溢れる世界に何故なるのか。 魔物と覇権争いをして人が制した月にも行かず、宇宙に点在するコロニーにも行かず、開発途上で多くのSeedが派遣されている火星にもいかずわざわざ、わざわざ同じ星の上の旅行を選んで計画して楽しみに楽しみに楽しみに!! していたのに!!!!!! 息切れがしそうなほど悔しい。 実際歯軋りしながらとりあえずネットを使うにもお金が必要だから天空闘技場に入ってみた。 以前利用した時よりもこぎれいでちょっと感心してしまう。 百万くらい溜めてネットをできるところを探して歩きながら身分証をどうしようか悩んでいた。 ハンター証も持ってきていないけど、一度ハンター証手に入れると紛失しても二度目は無いらしいからどうしても私はもうハンター証を入手できないだろう。 効率的に稼げるいい手段だと思ったんだけど。 無くてもいいちゃいいけど。 その心意気で私はとりあえずネットにアクセスした。 そして気が付く。 モニターの隅に表示されている時刻表示の年号に。 「せん……きゅうひゃく、はちじゅうねん?」 おーまいがー。 あれから何年? どころかあれより二十年以上昔の時代だった。 通りで天空闘技場が新しく見るはずだ。 二十年分の歳月は侮れないぜよ。 なんと言ったって二千年くらいで19歳だったレオリオがこの年かこの次の年くらいに生まれて二十年後には見事なまでの老け面に成長するまでの時間なのだから。 わぁお。 これは下手にハンター証なんて持ってこなくて良かっただろう。 これつかえばいいや、と適当に提示していたら明らかにまだ行なわれていない、発行されていない筈のナンバーのハンター証でもしかしたら偽造の嫌疑が掛けられたかもしれない。 うん、ビックリ、どびっくり。 なんにしても驚いた。 どうしよう。 ほんとどうしよう。 あーもう! 帰りたいよー!! |
御堂霧枝の一人旅――3
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まだジンがグリードアイランドの開発を始めていないだろう頃合。 効率よく稼ぐにはどうしたら言いか。 天空闘技場はある。そこで毎日こまめに戦っていればそこそこの効率でお金が溜まる事は知っていたが、これは酷く面倒くさかった。 200階に上がらないために闘いを調整するのがとても。 しかもそんじょそこらの奴なら私のほうが強い事は確定なのだ。 手加減だってできるがそれはあくまで負けない手加減であって負ける手加減なんてして来なかったし、いちいち休場するのも興ざめだろう。 なんといっても天空闘技場は大規模な賭博場でもあるのだから。 効率的にお金を稼ぐにはどうすればいいか。 私は闘技場で闘いながら考えた。 私は相変わらず比べる人たちと比べれば弱いが、この辺で名を上げようとしている人々と比べれば恐れるほどでもない程度には強くなっていた。 強者を見抜ける程度にも強くなっていた。 問題ない。 いい考えが思いつくまで、と戦っているうちになぜか。 気が付けば弟子を取っていた。 取る気は無かったのだけど、私の闘技場での戦いを見て弟子入り志願者が出たのだ。 まだ若い、十代も前半らしいその少年はズシに似ていないことも無かった。 おっとりしているが一直線、信じた道も己も曲げない感じが強化系か強化系よりの放出系だろうと思わせた。 少年は開口一番私に言った。 「 と。 私は売名が目的ではなかったので適当にナナシと登録して出場していたのだが、ナナシにしていたせいか二つ名が付くようになってからは誰もナナシとは呼ばなくなった。 あからさま過ぎる偽名が呼んだ悲劇だろう。 いまさら登録名を変えることも出来ず私は出場する限り恥しい二つ名で呼ばれることになった。 だからいい加減トンズラしようと考えていたのだ。 その矢先の出来事だった。 私は反射的に少年の口を塞ぎそこを飛び出した。 奇しくも誘拐となってしまったのだ。 鍛錬をつける代わりにここで上り詰めてファイトマネーを稼ぐ事を条件に弟子に取った。 お金にはあまり興味がなさそうであったし、自分で稼いだ分であれば別に持ち逃げされても構わなかった。 そのあとでようやっと少年の名前を聞いて愕然とする。 「はい! 僕はウィングといいます」 もう歴史とか本編とかどうでもよくない? そんな気がして来た。 本編では彼は三十台の前半くらいだと思っている、けど実際には何歳くらいなんだろう。 |
御堂霧枝の一人旅――4
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弟子を取るのは初めてだから、何年に一人の才能、とか何人に一人の才能、とかそういったものは全然分らない。 けど、才能が無いほうじゃないのだろうとは漠然と思う。 とりあえず闘技場に参加させながら瞑想によって精孔を開かせたところ二週間は掛からなかった。 彼が闘技場で稼いだお金は全て私の預かりとしているが、ホテル代や食費を含めると初めのほうは当たり前だが赤字だった。 五十階程度なら直ぐに上り詰めてあっという間に黒字になったが。 教育方針は習うより慣れろ。 でもまあ強化系の彼には合っているんじゃないかと思う。 そろそろジンがグリードアイランドを作り始める頃で、来年辺りにはたしかクラピカも生まれるな、とか思いながら。 戸籍もないし丁度いいかと流星街にも行ってみようかと思ったけど、やめた。 今なら彼らも怖くはないし、見にいってみようかと思ったけど迷うという事は割とどうでもいいことだ。 実は彼の弟子入りがきっかけでほかにも数人弟子を取る嵌めになっていた。 世の中ほんと、ままならない。 ウィングは弟弟子がたくさん出来て兄弟子の自覚と共に人格をはぐくんでいっている。 といっても弟弟子の中にはウィングより年嵩の者も居たが。 親は無くとも子は育つ、とポツリともらしたら怒られた。 「僕は師匠の背中を見てこうあるべきだと思い行動しています。それを否定しないで下さい!」 だそうだ。 模範になるつもりはなかったが、ガーデンで孤児たちを育ててきた時の行動がそのまま出ていたようだった。 あそこじゃ私もママ先生で、戦うことだけじゃなくて学ぶ事も教えている。 そういえばウィングの両親はどうしてるんだろう。 家出、して来たとか? 孤児というには身奇麗だった。 いまさら立ったけど不安に思って尋ねてみた。 それはある晴れた日の、ウィングが70階で負けて50階に落ちた日だった。 「ねえウィング、あなた両親は? まさか家出してきたとか言わないでしょうね」 「僕の両親、ですか?」 ものすごく、いまさら聞くんですか? みたいな呆れた目をされてしまった。 頑固だけど物の道理は通す子だったからあまり不安ではなかったけど不安だった。 「条件付で修行に出ることを許してもらいました」 「条件?」 「はい。もしあなたに弟子入りが叶わなかったら、闘う者としての道はきっぱりと諦めると」 「……はぁ」 びっくりである。 「だからあの時は必死でした。家を出てから10日の間に弟子入りの許可をもらえなければ家に帰らなければなりませんでしたし、師匠を見つけるのだけで7日も掛かってしまっていてもう殆ど後が無いような心境でしたから」 これもまたびっくりである。 もしあそこで私が断っていたら、彼にはビスケに弟子入りするという道も断たれていたのか。 なんにしても強くたくましくまっすぐに育っていく子供を見ているのは気持ちのいいものである。 約一名子供ではないのも居たが。 よく育った兄弟子と個性豊かな弟弟子たちとのどたばたとした普通の修行生活をおくり、全員の精孔を開くことに成功したのは一年程が立ったころだった。 何やっているんだろう私、と達成感と同時になんとなく思う。 とりあえず徹底的に防御を叩き込んで私は携帯電話を人数分契約し借りているホテルに念能力で作った常に私をめがけて開く扉を設置し世界各地に出ることにした。 試合では念能力を使わないことを厳命してある。 念能力者と当たった時には棄権しろとも伝えてある。 いざと言うときにはウィングに止めろと伝えてみた。 お金儲けはもうちょっと後でもいいやととりあえず希少な水晶を求めて活動の範囲を広げ始めた。 半年ほど弟子たちの面倒を見ながら活動をしている間にウィングが100階の闘士になっていた。 子供の成長は早いなぁと思う。 全く新しく人脈を築くのに苦労していたから、師匠ーししょー! と慕ってくる子供には安らぎを覚えた。 よかった。 ほんとうによかった! むっちりマッチョの汗っぽい巨漢とか弟子にしなくて! |
御堂霧枝の一人旅――5
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年は1986年。 マリリン社よりグリードアイランドが発売されるとの情報が流れた。 なんとしてもゲット! とは思わないけど弟子達をつれて修行に行くのもいいかも、と思い始める。 なんといってもジンがゴンの為につくった修行ワールド。 ウィングも実力で200階にたどり着けないけどその付近をうろちょろできるくらいには強くなった。 時々怪我をしたときに私の念薬を使うのだが、その値段を聞いて真っ青になる程度にはかわいげがある。 ハンター試験とグリードアイランド、どっちを先にしようかと思ったけど、その前にふと気が付く。 グリードアイランドの発売が目前と言うことはバッテラの恋人が既に事故にあい寝たきりになっているのだ、と。 そのせいでバッテラにグリードアイランドを買占めされるのだし。 文珠を作るのに必要な資金を稼ぐのにいい手段を思いついたと私は立ち上がった。 「ウィング」 「はい? なんですか師匠」 「一週間ほど出てくるわ。そのあいだ弟弟子たちのことを頼んだわよ」 「……了解しました」 「土産は期待していて良いわ」 「期待しないで待ってます」 ああほんと、よく出来た弟子だこと。 そうして私は旅立った。 まずバッテラ探しに三日ほど。 まだこの時にはバッテラもそれほど有名な資産家ではなかったのだ。 であったバッテラはまだ若かった。 だがその内面によって老けた表情をしていた。 私はその寝室で待つと言う悪趣味な出会い方を演出する。 「はぁい、ミスタ・バッテラ」 誰も居ない部屋に肩を落として入ってきたバッテラは私の声にハッと声を上げた。 「何者だ」 直ぐに人を呼ぶだろうかと思ったけどそうするわけでもない。 驚きを見せたのも一瞬で直ぐに彼からは何もなくなった。 なにもない。 恋人以外なにもない。 恋人を目覚めさせるための、それを待つため、迎える為の自分であって、そのほかには何もない。 出会った彼はそういう男だった。 ちょっと罪悪感を感じながらも私は取引を持ちかけた。 グリードアイランドよりは確実だろう。 あれは結局500億のために雇った互いが足を引っ張り合った結果だ。 互いが争う事で一刻でも早いクリア者の出現を願ったのだろうけど、実際はまったく逆といっても等しい。 互いが独占など狙わなければ、彼らは殆どのカードを入手していたのだ。 「あなたに取引を持ちかけに来たの」 「私には何も無い」 「恋人を助けられるとしても?」 バッテラの眼光が鋭くなる。 「言ってみろ」 「5000億ジェニー」 「話にならんな。詐欺かもしれん」 「グリードアイランドにかけるよりは確実よ」 「お前……何処まで知っている」 「さあ、どこまでかしら」 とはぐらかす。 結局バッテラは私と契約をした。 恋人の事故から14、5年で五千億の財産を作るバッテラの才能を手に入れたのである。 しかも出資者は私。近頃弟子が頑張っているから元手はそこそこ豊富である。 ついでに回復を齎す薬もバッテラに買い取ってもらう形で順調に製作を開始していた。 それをバッテラが彼が私に払った値段よりも高く売りさばく事によってバッテラも潤う。 そうしてその薬によってバッテラの知名度が上がり尚商売がしやすくなる。 いい循環だ。 それらの回復効果のある念薬によって私はバッテラの信用も得たわけだが、もちろん彼は本当に効果があると判ったら真っ先にそれを自分の恋人に使った。 結果としては直りきらぬ外傷は治ったが意識は戻らなかった。 せこいが、私はバッテラが資金を用意するまでバッテラに売る薬に彼女の意識不明を回復させられるだけの薬は無かった。 あまりあくどい、人の恨みを買うようなことはしないでおけと釘をさして私はバッテラに好きにやらせた。 せっかく回復しても買った恨みが原因で再びなにかあっては元も子もない。 そうしていながらぼんやり考える。 私のほうがよっぽどあくどい。 |
御堂霧枝の一人旅――6
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バッテラのところからの帰り道、そろそろ逆算してゴンとかキルアが生まれるなぁ、と思う。 グリードアイランドの予約が開始された一秒後に無事に予約が完了し、次に画面を見た時にはすでに予約が満了になっていて驚いた。 ものすごい高額商品だ、と昔の私ならおもっただろう。 買う人は買うものである。人のことは言えないが。 弟子達へのみやげ物も物色し意気揚々と帰ったらウィングが二百階に到達できるまでになっていた。 試合に念は使うなといっているので純粋に技術によって勝てるようになったのだ。 とりあえず190階では途中棄権して勝利を先送りにしていたとの話だ。 何故そんなことを下のかと聞いたら弟子入りの条件がここでファイトマネーを稼ぐ事だからと返された。 ふむ、すっかりそんなことは忘れていたわ、とは表情に出さない。 やはりグリードアイランドにいくべきだろうか。 金蔓は出来た。 ハンター試験に出してもいいが、そうしても結局はここに帰って来るまでに登録は解除されてしまうだろう。 ところで一人前っていうのはどれくらい育てればいいのだろうかとそろそろ真剣に迷う。 とりあえずおめでとうパーティーをして場を誤魔化した。 実のところ200階以上の試合に出して大丈夫なのかどうか自信が無い。 天空闘技場の念使いのレベルは低い。 そりゃそうだろう。 ここには師匠が居ないのだから。 洗礼によって念を扱えるようになってもそこどまり、と言う者が多い。 ただ錬を覚えただけのゴンに勝てなくなるあの新人つぶしの三人組程度というか。 あれは200階でも下のほうだが、まあ似たり寄ったりではある。 けれど自分は弟子を取ったのは初めてなのである。 師匠にはいまのウィングくらいの時には放り出されていたような気がするけど、不安だ。 彼も彼だ。どうして私なんかに。 まあ、いいか、と。 180階であと五回勝ったら200階を目指してもいいと告げて10日で彼は200階を目指した。 実力はもはや疑うまでも無いようである。 そこで目標を切り替えてみた。 弟子全員を200階に上げて最終的にはハンター証を入手したところで一人前としよう、と。 もう何処まで育てれば一人前といっていいのか判らなかったので何処かで区切りをつけないといつまでも手元に置いてしまいそうだった。 そしてさっそく200階に上ったウィング。 すでに念の使い手であり、そしてここで念を覚えた下手な念使いよりよほど上手な使い手と育った今彼にとってこの闘技場で新人を狙っているような使い手など敵ではなかった。 新人つぶしってどこにでも居るんだなぁ、と思う今日の日。 さっそく第一試合をクリアしてそのウィングを見て自信をもった私は次々と弟子達を200階にのぼらせようと画策を始める。 ウィング本人は猶予期間の間にハンター試験に送り込んでみた。 誇らしくハンター証を持って帰って来たウィングを私たちは精一杯の喜びを以って迎え入れた。 負けてられないと弟弟子たちに気合が入ったのが嬉しい誤算だった。 「さてウィング」 「はい、師匠」 改まった場を設けて私とウィングは向かい合った。 「ハンター試験合格、おめでとう」 「ありがとうございます」 改めて言われて感極まるようそうのウィング。 彼はもはや少年ではない。少々長く手元に置きすぎたようだった。 「無事にハンター証も獲得したし、君は今日で私の元を卒業だ」 「……師匠?」 「惜しいが、少々長く手元に置きすぎたと思うわ」 もしビスケが師匠だったらウィングはもっと早く世間の荒波の中に飛び込んでいったことだろう。 しかもウィングは私を師匠に選んだために心源流師範代の称号ももらえない。 おめでとう、私は精一杯君を育てた。 そして君は精一杯私に応えた。 だから私はごめんなさい何ていわないよ? 「今日からは私の弟子のウィングじゃなくて、私の弟子だったウィングとして生きなさい」 「師匠……!」 ウィングは涙ぐむ。 眼鏡の向こうの黒い目が潤むのを必死に堪えているようだった。 それでも堪えきれずにつぅ、と涙が零れ落ちる。 「これ、持って行きなさい」 「なんですか? これ」 カードサイズくらいの包みを差し出すと、ウィングは躊躇いながらもそれを受け取り、私のほうを一度見てからそっと開いた。 「――これ、師匠!」 「あなたが今まで天空闘技場で稼いだファイトマネー(の一部)よ」 「ですが師匠、そもそもあなたへの弟子入りの条件が」 「いいから、持っていきなさい」 三分の二程度だけど。 ぐっと唇を引き絞るウィング。 素晴らしい師弟愛の出来上がりではないだろうかこれは。 |
御堂霧枝の一人旅――7
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困ったことがあったらいつでも連絡を入れなさい、とホームコードを教えグリードアイランドなる物の存在も教え、そしてウィングは旅立って行った。 のこる弟子達がウィングの背中を眩しく見つめる。 さっさと育ててさっさと行くんだ! 続く二年の間に私は全ての弟子にハンター証を取らせ私の元を卒業させた。 その頃に私はようやっと、あのみょうちきりんな二つ名で呼ばれることがなくなっていた。 弟子を取ったあたりから自分では戦わなくなっていた物の、弟子が居るから天空闘技場には頻繁に姿を現していたために私の名前はなかなか消える事が無かったのだけど世間はようやく私を過去にしてくれたようだった。 それからちょっとした頃にキルアらしき子供が天空闘技場にやって来た。 遠目からそれを観察しながらへぇ〜とただ見ているとぞくりと背中に怖気が走った。 とっさに振り返る。 振り返ってしまう。 「……シルバ」 唇が動く程度の呟きがこぼれた。 キルアを連れて来たのって本当にシルバ本人だったのかと感心する。 子供も親もどっちもまだ若い。 小さなキルアは可愛かったけど別に高揚もしない。 手を出したらシルバが煩そうだったので、というか近くに居るだけでなにかありそうで嫌だったので私は闘技場から撤退した。 その帰りに希少な水晶を手に入れるために情報として使っている希少な物ばかりを扱っているバイヤーのところに立ち寄ったら、取れたてほかほかだとクルタ族の眼球をお勧めされた。 実際に一目見たけど、綺麗だったけど手元に置きたい気はしない。 でもとりあえず購入した。 こういう風な買い物をするから目的以外のものも薦められるんだとは分かっている。 お得意様にならなければ欲しい情報も私に入ってくる以前に横に流れてしまう。 必要経費と割り切った。 そうだクラピカに会いに行こう。 まだ多分大丈夫、クルタは全滅していないはず、と私はハンターサイトに接続するべくパソコンを求めて彷徨った。 ちょうど持ちきりのニュースは流星街出身の浮浪者の冤罪が証明され、その直後同出身の何人だったかが報復のために冤罪に関わった者達を自爆に巻き込み殺害した事件だった。 たぶん、まだ大丈夫。 二年後、私は山野に響く声を張り上げた。 「帰ってきなさーい、クーラーピーカー!!」 がさり、と頭上のこずえが揺れて大きな塊が落ちてくる。 それは無表情な金髪の子供だった。 着地したと思ったら私の足元にまとわりついてはなれなくなった。 これが、クラピカだった。 「おかえり」 といえばうんと頷く。 だが言葉はない。 クルタ族は滅ばなかった。 けれどクラピカは言葉と表情を失った。 ウィングを弟子にとってしまったし今更だよね、の心持でクルタの滅亡を防いでみようと思い立った私が一路自分の足でクルタの集落があると思われる場所へと進んでいる時だった。 であったのだ。 あの幻影旅団に。 最悪の遭遇だった。 旅団のメンバーが全て集まっての大仕事に遭遇してしまったのだ。 いや、そもそも遭遇するつもりだったといえることではあるけど此方に準備ができていなかった。 出会い頭の先頭でビックリしたのなんのって、見ず知らずの二人の要員がネックだった。 おそらくはナンバー4と8。 ひたすら触れないようにしているのにひたすら触れてこようとするパクノダも厄介だった。 集落にたどり着いた後なら拡散していただろうから各個撃破も出来ただろうけど、その移動中では9対1の絶対的不利だった。 八時だよ、全員集合〜〜! とか一瞬思ってしまうほどなにか衝撃を受けた。 このフレーズが有名だから知っていただけで番組の内容は全然知らなかったけど。 とにかく散々念具や薬を使って痛み分けにして退散したわけだったけどこれがいけなかった。 幻影旅団がクルタの集落に到着する時間を遅らせてしまったのだ。 逃げ出して回復して急いで集落に向かった時、そこは燃え上がっていた。 クルタ族の成人は念能力を身につけている人間も多いようでそこそこ奮闘していたが、守る者のある彼らは絶対的に不利だった。 村の入り口に立ち尽くす少年が居た。 彼の足元には息絶えた成人の体格をした人間が横たわっていた。 その屍を踏み越えて少年に迫る影があった。 それを見つめる少年の目は炎のせいではなく、緋色に染まっていた。 「サンダガ!」 もっとも速い魔法を唱えてその影を撃退し、村の入り口で虐殺を目撃していた少年をとりあえず確保して私も戦闘に加わった。 クルタ族は滅びなかった。 けれどクラピカは言葉と表情を失った。 |
御堂霧枝の一人旅――8
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きちんとした乱戦に入り込んでしまえれば、奇襲の霧枝の名に恥じずに奇襲を掛け捲った。 奇襲でもかけきゃやってられるか。 一人を倒す間に集落の半分が死ぬ。 彼らは強い。そして奢った私は弱い。 念能力への封印を掛けて私の懐はすっかり赤字だ。 全員捕まえたところで僕らは幻影旅団です、と名札を首から下げてハンター教会の門前に置き去りにした。 もう2・3日は体の痺れも取れないはずである。 悪は滅んだ、というよりこれで此方での私の生存確率が格段に上がっただろう。 先の遭遇でバッチリ顔を覚えられてしまったのだ。 恐ろしすぎて野放しなんて出来ない。 彼等が私に興味を持たない可能性もあるが、そんな可能性に掛けて放置しておけるほど私は暢気ではないし楽天家でもない。 一切の禍根無くしてしまえないのは私の――甘さと言われるだろう。 けれどその甘さを失くしたら私ではないような気もするのであとはせいぜいその甘さに取り殺されないように気を配るのみである。 一通りの彼らをとっ捕まえたら今度は私がクルタ族に取り囲まれたわけだ。 排斥されるか、と思ったが幸いなことに感謝された。 そして気がつけば私が始めに助けた少年を私が引き取ることになっていた。 けが人なら薬や魔法で回復できた。 だけど彼の両親は既に死者となっており、彼は不幸にも惨殺を目の当たりにして声と表情を失ってなぜか私に張り付いて離れなくなった。 トイレに行くのも一苦労だ。 本来なら襲撃が終わり旅団が撤退したころに集落にたどり着くはずだったのだろう、彼は。 その彼の名前をクラピカといった。 クルタ族は生き残りをつれて集落を出るという。 私はクラピカを連れて彼らから離れた。 一月でクラピカは私から離れるようになった。 相変わらず声も表情もないが。 良かったのか悪かったのかといえばクルタ族にとっては悪くはないのだろうとは、思っている。 よく分らない。 する事が無かったので私はクラピカに念を教えた。 クラピカが何を言いたいのか単純なことなら分るけど複雑なこととなるとさっぱりとなる。 だからオーラが出ればそれで感情なり何なり察知できないかと踏んだんだが、成功か否か。 まあ失敗ではないだろう。 彼はオーラで喋るようになった。 空気を振動させる能力だ。 まるでどこかの音声魔術師を思い起こさせる。 クラピカは自分の喉を使わずに言葉を取り戻した。 もう私の知るクラピカとは別人だった。 彼はその能力で喋る第一声に私の名前を選んでくれた。 本人にはそんな自覚はないのだろうけど、まだ拙い能力で喉を震わさず空気を震わして 「きりえ」 と言ってくれた時はわりと感無量だった。 それからしばらくクラピカ少年との生活が続き、そういえばバッテラに二年ぐらい音信普通だった、と思って連絡を取ってみた。 此方から作った薬を送り込むだけでバッテラからの連絡を一切受けていない。 かなりしまった! と言う心境だったがおくびにも出さずに連絡を入れたところ大声で怒鳴られた。 4000億をオーバーしたらしい。 素晴らしい、ビューテホー! 弟子一人当たり200億ぐらい搾取したから2×6くらいで1200くらいは手元にある。 おお、足せば5000億を越えたではないか。 と。 私はとっときの一つの念薬をバッテラに手渡した。 それが使われる瞬間には立ち会わない。 感動の瞬間に立ち会うのはあくどい私には似合わない。 クラピカの手をとり私は進む。 バッテラには私が資産を引き上げるまでせいぜい増やして自分の手元に残る分でも作っておきなさい、などと言ってみた。 若返りの薬は一粒百億で吹っかけてきた。 天空闘技場に戻るつもりはない。 今頃ならヒソカが危ない。 クラピカも十五歳になり、声こそ出ないものの言葉は取り戻し、言葉を取り戻してからは順調に表情も取り戻した。 今では喉を震わせない声で憎まれ口まできちんと叩く。 そろそろ彼の一族に彼を帰すべきかと思っていた頃に贔屓にしているバイヤーから連絡が入った。 いい感じの水晶球が手に入ったと。 そろそろ潮時かもしれない。 |
御堂霧枝の一人旅――9
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か〜えろうか〜やめようか〜、と考えていた頃に、ふと懐かしい人物から連絡が入った。 ウィングだった。 弟子を取ったと連絡が入った。 名前を聞いたらズシだった。 因果か。 これは好機と私はこの弟子に一つ頼みごとをした。 そしてこの弟子はその内容を聞かないうちから請け負ったのである。 だから私はクラピカと向かい合っていた。 「クラピカ」 「なんですかキリエ」 クラピカの声はほとんど肉声と変わらない。 しかも外に出たならば喉から声が出ていなくても言葉に合わせて口パクをするという芸まで身につけていた。 私の前でだけは口パクをしないから、彼は喋っていても口は動いていない。 「先方に話はつけておいた」 「だから何の話ですか」 「ヨークシンシティの駅まで迎えが来ている。行って来なさい」 「キリエ?」 「クラピカ。あなたと過ごした時間はとても楽しいものだったわ。私はこれからとても、とても遠いところに行かなければならないの。貴方は連れて行けない。ウィングは私の最初の弟子で、とても誠実な人間よ。私なんかよりよっぽど頼って良いわ」 「キリエ!!」 がたん! とクラピカが座っていた椅子から立ち上がった。 だけど言葉が、続かないようだった。 捨てるのか、と問うのか? 賢い彼だ。拾われたのではなく自分が付いて行っただと言うことくらい分かっている。 あるいは急すぎる、と? 今更私にそれは文句にすらならない。 私は予定の無い人間だった。何もかもが唐突で、その唐突さもクラピカにとっての日常だった。 沈黙の時間は永かったように思う。 やがてクラピカはぎゅっと唇を結ぶとすっと頭を下げた。 「今まで私と共に居てくれたことに、感謝する」 言ったクラピカの口は閉じられたままではなくなっていた。 こんな些細なことに私は彼の決別を感じた。 「餞別だ」 と言って私のが通帳と言うあたり現金な人間のような気がしてなんだか複雑な気分だ。 現金が何をするにしても最も役に立つのは確かなんだけど、思い出の一品になるかもしれないのが通帳と言うのはなにか複雑な心境だ。 受け取ろうか否かと迷うクラピカに私は通帳を押し付けて立ち上がる。 「来年のハンター試験を受けるといい。お前はもう合格できるだけの実力がある。そして、お前はそこでかけがえのない何かを手に入れられるだろう」 上手くいけば。 些細なことから大きなことまで色々やってきたので上手く時間があるかどうかは分らない。 上手くかみ合ってゴンやレオリオやキルアが試験に参加していても絆を育むかどうかは分らない。 だけどまあ、わからない事が醍醐味だ。 クラピカに背を向けて進んでいてもいつまでもいつまでも背中に視線を感じていた。 さらばだクラピカ。 |
御堂霧枝の一人旅――10
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クラック一つない水晶は四つ。 自然のオーラが強く感じられるそれは合成品などではありえない。 特上の水晶だった。 それをハンカチのポケットに入れて私はホテルのベッドの上に居た。 もう念は掛けてある。 後は使うだけである。 未練とかなんだかいろいろといつの間にか出来ていたなぁ、と思う。 ハンターサイトでいろいろ調べてみたら、ここの世界に御堂霧枝はほかにいないようだった。 心底良かったと思う。これだけ好き放題やっておいて今更の懸念だったけど、どうやら別の世界軸のようで本当に安心である。 ベッドに転がってもう三日。 そろそろ決着を付けるべきだろう。 私は大きく一つ深呼吸をすると、握った水晶球を、文珠を握る手に力を籠めた。 力と共に意思も籠める。 手の中が熱く光った。 手の平を開いて文字を確認した。 そこにはきちんと、今度は狙い通りの文字が浮かび上がっていた。 庭・に・帰・還 視界も意識も眩い光に包まれる。 気がつけば違う天井を見上げていた。 見覚えのある室内。 私の部屋だ。 急いでデジタル式のカレンダーを確認した。 呆然とした。 扉の外に軽い足音が響いてくる。 誰かが駆けて来る。 いや、この馴染んだ足音はおそらくはセルフィのものだろう。 通り過ぎるかと思った足音は私の部屋の扉の前で立ち止った。 慎ましやかに二回ノックされる。 「キリエ〜、起きとる?」 「うん、起きてるよ?」 「遅くにゴメンな〜、明日の旅行のことでちょっと聞きたい事があるんだよ」 「いいよ、はいっておいで?」 セルフィを招く。 カレンダーはまだ、私が旅立った日付を示したままだった。 |