深淵ボート 6



 確かに私はジェイドに雇われた。
 けど、何で一人で野営の準備してるんでしょうかね?
 十万ガルド、安かったかなぁ。
 もっと吹っかければよかった。

 火を焚いて、適当に料理を作って、沈黙しながら平らげて。
 雰囲気が重い。
 さっさと自分の分をたいらげて、私は子ライガ二匹を連れ立ってパーティーを離れた。
 ちゃんと言い置いてきている。
 ライガたちに、狩りのやり方を教えようと思ったのだ。
 何時までもあっちの世界の肉の味を教えるわけにもいかないし。

 目の前で狩った魔物を食べさせながら、私は携帯を手に取る。
 円を広げて周囲の警戒もする。
 アンテナは三本。
 念具だから、中継基地も必要ないんだけど、地下だけは通じないのだ。
 電池はオーラ。
 だから、よっぽどからっけつになっていない限り電池切れの心配もない。
 リダイヤルからアーヴァインの携帯の番号を押し、かける。
 三ベルで出るあたり、待たせていたか。

『やあ、久しぶりだねキリエ』
「久しぶりってほどでもない気がするけど」

 電話越しのアーヴァインの声。
 それだけで、なんだか安心できてしまう。

『電話も通じないし、移動のときに離されてしまったから、ずっと心配していたんだよ』
「ええ? だって、はぐれちゃったのって本の数日前でしょ?」
『まさか! 僕は十五年も前からここにいるんだよ? あっちの世界の暦に合わせればそろそろ三十年にもなるんだ!』
「うわぁ、それこそまさかだよ。私はこっちに来たばかりだってのに」
『とんでもない時間差だね』
「うん。今度はもっと能力の安定を計ろうか」
『そうしたほうがいいかも。ところで、フィールにまだ会ってないよね』
「あ、フィールはもういるんだ」
『僕よりは遅かったみたいだけど、キリエと比べれば大分早く連絡が付いたよ』
「そっか、無事なんだ。よかった」
『後で電話してあげなよ』
「うん、そうする。それより、アーヴァイン、いまはどこに居るの?」

 互いの無事を確認しあい、現状は悪のための話し合いに入る。

 アーヴァインは、今はダアトに身を寄せていること。
 ダアトと言うよりは、ローレライ教団か。
 現在直接的に居場所を言えばタルタロス。
 どんな内容かは知らないが、幼い時のアッシュ、当時はルークか。彼に、ガーデンと魔女の名にかけて、誓いをしたらしい。
 そのせいもあり、アッシュにくっついてローレライ教団にいるらしい。
 まあそうなれば彼も戦えるわけだし、借り出されるのも当たり前か。
 まあ、もらえるものは貰っているらしいが。

 私は、対面で話せないのが辛いところだが、何とか口頭だけで現状と、この世界について知らせる。
 知っている限り。
 相手にとっては十五年以上たっていても、こっちにとってはまだ一ヶ月たっていないのだ。
 空間転移系の念が使えるGFはそろっているが、その念【開門の審判者】は、異世界移動系の念能力の使用後一ヶ月は使用が封じられる。
 電話に供給する程度のオーラ消費で疲弊するほどやわではないが、円を展開しながらの頭を使う思考は、結構疲れる。
 と言うか苦手だ。

 アグゼリュスの救助の手配も頼みたいし、神託の盾騎士団に襲撃されたタルタロスの乗組員の現状も聞きたい。

 合間合間に愚痴が挟まってくるのが切なさ割増感。
 私がこの世界にいなかったから、満足に念具が使えなかったらしい。
 ポーチは中身を共有しているけど、共有しているからこそその空間の大本のポーチが同じ世界になければ使えない。
 親ポーチが私ので、アーヴァインとフィールのポーチは子ポーチに当たる。
 今までずっと念具なしで頑張ってきたのか――。

 それこそ最初にこの世界に来たときの私みたいに死に掛けなかったんだろうか?
 尋ねればそんなことはないという。
 世の中理不尽だ。

 長電話のうちに気がつけば月の位置が変わっていて、あわてて帰るとジェイド以外はすでに眠っていた。
 うわぉ。
 尋問タイムの予感。










 清々しい朝にはラジオ体操だと思って体操していたら、変な目で見られた。
 ジェイドには今度、緑のカラーコンタクトを贈呈しようと思う。
 個人的にはアイスブルーがすきなんだけど……。
 あ、もしかして、色の薄い青いコンタクトはめたら、紫色にならないかな。

 昨日の晩は案の定尋問タイムになった。
 アーヴァインたちとの関係からルークやイオンのこと。
 秘預言の内容に感知していることまで聞かれたことはさまざまあったが、答えられることなどそうない。
 はぐらかしたり沈黙をもって答えとしたり。
 ため息をつきつつも、ある程度で矛を収めてくれたのはありがたい。

「私とキリエとガイで三角に陣形を取ります。あなたはイオン様と一緒に中心にいて、もしものときは身を守ってください。一応、後衛のティアもいますから、大丈夫だとは思いますが」
「え」
「おまえは戦わなくても大丈夫ってことだよ。さあ、いこうか」

 その守るべき対象を置いていってどうするの、と。

「ま、待ってくれ」
「どうしたんですか?」
「……俺も、戦う」
「人を殺すのが怖いんでしょ?」

 ごめんジェイド。
 一発殴りたい。
 どうしてあんたの言葉からはそう人を揶揄する響きが感じられるのか。

「怖くなんかねぇ」
「無理しない方がいいわ」
「本当だ! そりゃやっぱちっとは怖ぇとかありけど、戦わなきゃ身を守れないなら戦うしかねぇだろ! 俺だけ、隠れてなんかいられるか!」
「ご主人様、えらいですの」
「おまえは黙ってろ!」

 捕まえられて、ぶんと放り投げられるミュウ。

「とにかく、決めたんだ。これからは、躊躇しねぇで戦う」
「人を殺すと言うことは、相手の可能性を奪うことよ。それが例え身を守るためでも」
「……恨みを買う事だってある」

 ガイの言葉には、実感があり、知る身としては、痛い。

「あなた、それを受け止めることが出来る? 逃げ出さず、言い訳せず、自分の責任を見つめることが出来る?」
「おまえも言っただろ。好きで殺しているわけじゃねぇって。……決心したんだ。みんなに迷惑かけられないし、ちゃんと俺も責任を背負う」
「……でも……」
「いいじゃありませんか。……ルークの決心とやら、見せてもらいましょう」
「……無理するなよ、ルーク」

 難儀な子供だ。
 まだ、守られていてもいいというのに。







 セントビナーに付くと、偽装していない神託の盾騎士団の兵士がいた。
 タルタロス襲撃とは無関係と言いはれるしね、今なら。
 最後に見たときにはラルゴもまだ生きていたし。

「あれは」
「神託の盾騎士団の兵士ね。今度は偽装してないみたい」

 ティアとルークが覗き込むようにして言う。
 誰かが手を入れたから、この場合神託の盾騎士団の正式な兵士の装束は、ルークはここではじめて見ることになるのか。
 追ってきていた兵士も、まだ偽装していた。

「何でここに……」
「タルタロスから一番近い町はここだからな。休息に立ち寄ると思ったんだろう」
「おや、ガイはキムラスカ人の割りにマルクトに土地勘があるようですね」
「卓上旅行が趣味なんだ」
「これはこれは、そうでしたか」

 寒い会話が繰り広げられる。
 どちらもひやりとしているこの感覚に、ルークは気がつかないのか。

「大佐、あれを――」

 ティアが指し示す先には、馬車が。

「次の馬車を待ち伏せ、襲撃し襲うことに――」
「キリエ」
「冗談です」
「街道を、少しさかのぼって見ましょうか」

 ゲームのし過ぎでイオンの声に違和感を感じている私。
 背後にルークとティアを置いて歩き出す。
 子供ねってティア……。十七歳のなりはしているけど、刷り込みもされなかった、七歳児だしね。

 こっちとしてはありがたいけど、見張りまで立てて荷台の検閲をしないのは手落ちだと思う。
 セントビナーのなかでローズ夫人と別れて、早速ガイがティアとルークをからかってティアに潰された。
 といっても、腕をとられてそのふくよかな胸を押し付けられただけだが。
 びくびくと震え倒れふす姿は――憐れ。

 少しいくと、ジェイドのマルクトの仕官服を見止めてか金髪の少年が話しかけてきた。
 死霊使いについて。
 であったら、こんど自分の父親を生き返らせてくれと、伝えてくれ――と。
 死霊使いは死人を生き返らせる実験をしていると言う。

 仲間達の会話に自嘲気味に呟く。

「火のないところに、煙は立ちませんがねぇ」

 と。
 ゲルダ・ネビリムのことか。
 同じ空間にいたのに、不思議と最後まで私を認識できなかった人。
 美人だった。
 そして聡明だった。
 ピオニーもジェイドもネフリーも同じように叱り飛ばせる胆のある人だった。

 最後尾にいたのに、先頭にいたジェイドと視線が絡む。

 ――あなたは、知っているのですか――とそう、問いかけられた気がした。










 マクガヴァン親子の前でアニスのルーク曰く目が滑る手紙を読み――というか朗読される。
 アニス、導師守護役の君が仮にもイオンをついでなんていってはならんよ。
 やはり、良く出来ているといっても十三歳は十三歳か。
 そもそも親を人質に取られての監視の意味合い――この場合いかにモースの都合よく進める事ができるか、と言う意味合いでの監視が意味が大きいだろう。
 もてもてとルークをからかうガイに抱きついて床に沈めておく。
 これからもガイの影が薄くなりそうな予感がひしひしとする。

「第二地点というのは」
「カイツールのことです。ここから先南西にある町で、フーブラス川を渡った先です」
「えと、たしかヴァンがカイツール方面から来ているとか言ってなかったっけ?」
「兄さんが……」
「では、私達はこれで失礼します」
「神託の盾騎士団に追われているなら、わしが力を貸すぞ。わしはここの代表市民に選出されたんじゃ。いつでも頼ってくれ」
「ありがとうございます、元帥」








 セントビナーの入り口付近に妙な影。

「……隠れて、神託の盾騎士団だわ」

 ティアに腕を引きずられるルーク。
 ガイは私が引きずったままだから、気絶したままだ。
 申し訳ないけど。
 それを急いでジェイドの背中に押しつけて、私は二匹の子ライガを抱えて彼等より風下に移動した。
 一人ぼっち。
 会話も聞こえない距離だけど、ライガに見つかる恐れがあるからこの距離は仕方がない。

 アリエッタにはうらまれていないようだけど。
 始終人形を抱きしめてうつむいている。
 イオンよりあのひねくれ具合がシンクの方が好きだね。
 可愛い。
 もちろんイオンも好きさ!!

 神託の盾騎士団六神将は、偽装を解いていた。
 あれが制服か。
 神秘性からは程遠いイメージがあるね。
 戦うための装束としては無駄も多いし。ああ、Seed服みたいなもんか?
 あれも式典用だもんねほとんどは。
 まあ、その格好でも警備とか戦闘とか、あるわけだけど。

 アリエッタのゴスロリはリグレット直伝だと思うがどうだろうか。
 はっきり言ってラルゴは趣味が悪いと思うのだが。

 アッシュがいないからか、当たり前のようにアーヴァインもいない。

 彼等が去ったと思ったら去ったと思ったで、今度は仲間内で喧嘩か。
 風下と言うこともあって、切れ切れに会話が流れてくる。

「あんた――いい性格してるなぁ」

 会話の内容が分らなかったけど、多分きっとジェイドに対するものだろう。
 それ以外考えられない。
 いい性格ってそんなの。

「当たり前じゃん。ジェイドなんだし」

 ため息をつかれた。










 セントビナーを出かけたところで、この町で一度休むことになった。
 体が健康になったとて、今まで鍛えることも出来なかった体力が一気に増えるわけでもないのだ。
 ダアト式譜術の負担は以前ほどではないだろうが、単純に移動の疲れが出たのだろう。
 無理して野外で倒れられるよりは早めに言い出してくれたほうがありがたい。

 借りた宿の中で、タルタロスから連れ出され何処へいっていたのか、と言う話になったのだが。
 やはりセフィロトだった。
 あー、くっそー。
 どこだった? ここのセフィロト!
 沈思黙考はたちじゃない。
 思わず拳に力が入る。
 握りすぎるから爪を伸ばせないのだ。手のひらに刺さるから。

「セフィロトで何を?」
「……すみません、教団の機密事項です」

 ジェイドの質問に、イオンの答えは素気無い。

「そればっかだなぁ。むかつくっつーの」
「セフィロト、教団の導師。パッセージリンク、ダアト式封咒の解咒、かな」
「何故それを!!」

 立ち上がるイオン。

「ユリア式封咒はあの髭が解ける。後残るは、アルバート式封咒か」

 もてる知識を並べ立てる。
 だが、まだ録に世界について調べていない。
 これで外れてたら大恥もいいところだ。

「何故知っているのか、とお尋ねしたいところですが、どうせ答えてはくれないのでしょう」
「ま、ね。今回のも、イオンの反応を見て確信を得たところ」

 しまった、とイオンの顔に書かれる。

「ところでキリエ、あなたは? 封印術の悪影響は出ていないのですか」
「譜術は使えないわね」

 もとより。
 けど、これで使う努力も無駄ということか。

「けど、体自体はとても調子がいいわ。まあ譜術が無くても困らないし」

 回復なら念薬、攻撃なら魔法、念具に魔具。
 魔法に関しては、この世界に魔力が無くても体の内に蓄えているものだから関係ない。
 使えば減るのが難か。
 それに、アーヴァインがこの世界にすでに三十年も留まっている様に、これからそれくらいの時間を留まる事もあるのなら、もう少し積極的に音素に体を馴染ませた方がいいのかもしれない。
 少しずつ解咒していく分には、きっと酷いことにはならないだろう。

「けどジェイド、すこしずつ封印術、解いていきたいと思うんだけど、私にはそれを解けるだけの知識も技術もない。と言うことで、協力してくれないかしら」
「――いいですよ。では、就寝前に私のところへ来るようにしてください」
「OK、じゃあ、頼むわね」
「ま、いいんならもうさっさと寝よーぜ。イオンはお強い大佐様に任せて」
「ええ、そうね」

 ぞろぞろと部屋を出て行く三人。
 部屋は三人部屋で二つ。
 ……イオンはともかく、ジェイドと一緒。

 多分今日はイオンも一緒だから尋問タイムもないよね。
 ささっと、寝るか?
 いやそのまえにリュックに頭からつっこんであるライガの世話を……。
 普段からイオンの目の前で戦っているし魔物も倒しているけど……改めて目の前で解体ショーを開くのもなぁ。
 一度、外に行って来るか。
 そのうち、町の中にはつれて入れなくなりそうだ。

「イオン、ジェイド、外でライガたちに飯食わせてくるから」
「気を付けて行ってきてくださいね。今日の解咒はどうしますか」
「帰ってきたときに、あんたがまだおきていたら、頼むわね」
「分りました。ああ、狩りはいいですけど、あなたが食べられちゃったりしないでくださいよ?」
「はいはい。まったく、何か一言わないと気がすまないんだから」

 ルークはまだ馴染まないだろうけど、親しい間柄になればなるほど軽口や暴言が飛び出す悪癖をもっている身としては、ちょうどいいのか。
 そう思うと内心は、とても複雑だ。
 ジェイドのことも嫌いではないし、むしろ好きなほうだけど。
 それでも複雑なものは複雑なんだよなぁ。
 先入観強すぎるのもねぇ。




 それで、帰ってきたら結局イオンが寝ていて、暗闇に光るのは二対の赤い目。
 何処のB級ホラーだよ。

「あんまり遅くまでおきていると、肌荒れするよ?」
「男ですから」
「せっかく仲間内で一番白い肌をしているのにねぇ」
「失礼ですね。あなたのためにおきていたのに」
「そりゃわるかったわ」

 ぶちんと会話が途切れる。
 何か言ってくれ。

「……あなたは、何をご存知なのですか」
「ジェイドにしては単刀直入ね」
「あなたと駆け引きをしても意味がありませんから。言うときは言う、ですが、どれほど言葉を弄してもあなたが言わないと思ったなら、失言すら引き出せない」
「えー、結構失敗したなって自分では思っているんだけど」
「けど致命的なものではないでしょう。失言と思わせて、望む情報を流していることもある」
「あー、そこまで頭働かせているつもりも、ないんだけど。まあ、いっか」

 他人が自分をどう思っているかなど完全に把握するのは不可能だ。
 どう思わせるか、自分の行動によってその傾向をある程度定めることは出来るが、今回は何の意図もない。
 異世界に行ったときに良くやるような、芝居っけも、皆無とは言わないがかなり薄い。
 周囲がまったく知らない人間で、ついでに仲間がいるから悪乗りするようなもので、今回はしょっぱなからジェイドがいた。
 一方的な知り合い、ではなく双方向的な知り合いだったから、あまり芝居も出来なかったのだ。

「何を知っているのか、と聞かれれば、あるいは全てと答えたくなるほど。けど、本当は何も知らないんだと思う」
「これはまた随分と抽象的な答えですね」
「まあ、少なくとも今いえるのは、ルークとイオンがレプリカであると言う懸念は、当たりと言った所かな。ジェイドは見たでしょ? タルタロスで。鮮血のアッシュが被験者。 イオンのほうは、オリジナルがすでに死亡している。レプリカは七体作られたはずよ。少なくとも生存を確認しているのは、七体目のイオンと、五体目のシンク。あとは……どうなったんだろうね」
「そう、ですか」

 ついと眼鏡を押し上げる。

「ねえジェイド。わたしね、とある事情があって、出会う前からルークや、イオンレプリカたちに感情移入している。たぶん、世界にある一万のレプリカとあの三人を選べと言われたらあの三人を選ぶし、それがオリジナルとの比較でも変わらない。まあルークはわがまま坊ちゃんだけど、根の優しさは見えているし、七歳児だと思えばあんなもんでしょ。イオンレプリカたちは、たしかある程度の知識を刷り込みされていたはず。ここのイオンもね。まあ、じゃなきゃ二歳児に導師なんて無理でしょ」
「製作者はディストですか」
「よくわかったね、と言いたいところだけど……」
「おや、外れましたか?」
「いや、あたり。褒めるまでもなく、ある程度情報があれば分るだろうなってこと」
「それもそうですね」
「サフィール、ダアトへ亡命。さっきは薔薇のディストって名前で六神将の中にいたし。ゲルダのこと、まだ追ってるんだろうね」
「……本当に、あなたは何でも知っているのですね」
「いいや、何一つ。心一つ分らない。どういう気持ちであんたがネビリムを追っていたのか、私には分らないよ」

 私とジェイドの心の形はきっとまったく違うだろう。
 だが、完全に理解しあえる生き物は相互に意味がないとも言う。
 だったらそれでもいいのだろう。

「ところで、今日は解咒はするんですか」
「ええ、お願い」
「では、とりあえず、上半身の衣服をとってください」
「……そういや、昔下着姿も見せちゃったしなぁ。いまさらか」
「あなたに発情するほど、女性に飢えていませんよ」
「いや、まったく魅力がないといわれるのも女性として虚しいんだけど」
「わがままですねぇ」
「そういうものよ」

 観念して上着を脱ぐ。
 ああイオン、せめて目覚めないで。

 ぶつぶつと私には分らない言葉を呟きながら触診するジェイド。
 ぐるっとまわされて、目をのぞきこまれる。
 そういうのは脱ぐ前にやってくれ。

「そういえばさ、ジェイド」

 私は暗闇に笑った。

「ここ、セントビナー。私の雇用は、セントビナーまでだったよね?」
「……そうでしたね」
「十万ガルド。ちょうだい?」

 ため息つくなって。
 色気がないのは私のせい……か?









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