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ベルケント
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タルタロスの中で姿を隠したまま、なんとなくユリアシティに着いたとき、行き渋るルークの前に、アッシュがやってきた。 無事でよかった。 本当に、よかった。 「お前は何処まで屑になるつもりだ、ルーク」 「……お、お前!」 ずんずんとルークの前に進み出たアッシュが、表情も厳しく舌鋒を閃かせる。 「どうしてお前がここにいる! 師匠はどうした!」 「はっ! 裏切られてもまだ『師匠』か」 「……裏切った……? じゃあ本当に師匠は俺にアクゼリュスを……」 「くそっ! 俺がヴァンの企みを阻止できなかったばかりにこんなことにっ!」 君だけじゃない。 僕もだ。 守るなんて言っておいて、なんてざまだろうね。 「お前もお前だ! 何故深く考えもしないで超振動を使った!? 超振動がどんな力であるのか、実感する機会はあったはずだぞ」 「お、お前まで俺が悪いって言うのか!」 「お前だけじゃない。だが悪い。 ふざけたことを言うまえに他にいうことがあるんじゃないのか!」 言葉は綺麗とは言えないけど、内容は――叱っている? 怒っている、んじゃなくて、叱っている……。 僕の贔屓目や叱り慣れていないことをひいても初めの頃にあったルーク、と言う生き物に対するうらみつらみとか、ある種の劣等感みたいなのは、多少残っていたとしても今こうしている分には見事に隠しおおせている。 アッシュの精神的成長にパパ涙がでそうだよ〜〜。 と言うのもあながち冗談じゃないかな。 ファブレの家にいたときや、攫われたあと見つけた時とかは本当どうしようかと思ったもん。 セフィ〜、僕頑張ってるよ〜! 「俺は悪くねぇっ! 俺は悪くねぇっ! 俺は……」 「だからそれが悪いって言うんだよ! 冗談じゃねぇっ! レプリカってのは脳みそまで劣化してるのか!?」 ほとんど初めてに近い叱る、と言う行為を下手でたどたどしくても頑張っている。 と思った側から怒るに変わった。 怒鳴っちゃったよ……。 でもまあ、初回としては上出来だよ。 「レプリカ? そういえば師匠もレプリカって……」 「……お前、まだ気付いてなかったのか」 一度押し黙り、目を伏せて思案したらしいアッシュが決意を以って眼差しをあげる。 「な、なんだ……! 何なんだよ!」 ルークの声は震えている。 聞きたくない、嫌だって、まるで聞こえてくるみたいだった。 「教えてやるよ。『ルーク』」 アッシュは止まらない。 逃れさせない真剣な面持ちでゆっくりと言葉を紡ぐ。 「アッシュ! やめて!」 とティアが叫んだが、チラリと一瞥しただけで言葉を継いだ。 彼女には止められない。 知らないほうがいい、と思うのも彼女なりの慈悲なのかもしれないけどね。 自分の事なのに隠され続けて今回の事態だ。 もう、一人だけ蚊帳の外、って言うわけには行かないだろう? 本人のことなのに本人だけが隠されている。 しかも隠されていると言う事実だけは露見しているんだ。タチが悪いよ。 無知は至上の幸福と誰かが皮肉った。 けど、僕は知の権利を彼から奪いたくない。 成長の余地があることだから、なおのことね。 「俺とお前、どうして同じ顔してると思う?」 「……し、知るかよ」 「俺はバチカル生まれの貴族なんだ。七年前にヴァンて悪党に誘拐されたんだよ」 七年前、誘拐。 ルーク自身もよく知っている身の上話だろう。 そして記憶喪失は入れ替わり、これで完全に説明が付く。 「……ま……さか……」 「そうだよ! お前は俺の複写人間だ。フォミクリーで作られた、レプリカなんだよ」 七年より以前の記憶は誘拐のショックでなくしたわけではなく、ただそのときより以前には存在自体が無かっただけ。 「う……嘘だ……! 嘘だ嘘だ嘘だっ!」 ルークの叫びが響き渡る。 魂の叫び――って、こういうものを言うのかもしれない。 悲痛な叫びは、聞いている僕の胸をも痛くした。 そして、腰の後ろに渡した剣を抜き放つルーク。 「……やるのか? レプリカ」 レプリカ、の響きを強調するアッシュ。 「嘘をつくなぁーーっ!」 僕が気分的に空に向かって報告している間に、ルークが剣を抜いてアッシュに切りかかる。 アッシュも、とっくに自分では使わなくなったアルバート流をわざわざ掘り出して使って、ルークに教える。 彼がレプリカだと言うことを。 知らずに居るわけには行かないなら、しっかり教えたほうがいい。 それがどんなに残酷なことでも。 知らないまま一生を過ごせるならそれもまたありだと思う。 けど、そうで無いなら、知る権利まで奪うことはしたくない。 今の彼は知りたくないかもしれない。 自分がレプリカだって。 でも、今、知らなければならないことだと思う。 背負いきれない重たいものがいっぺんに降りかかってきて、大変だろうけど。 それに平行して、アッシュはごく弱いながらもフォンスロットを使っての干渉も試みているようだった。 「……嘘だ……俺は……」 うわごとのように力を失った声は、それでも否定の言葉を呟き続けていた。 「うそじゃねぇよ……。お前がヴァンの野郎に裏切られたのも、アクゼリュスを落としたのも、レプリカであることも、全部――な」 そして倒れるルークの体。 僕は黙ってそれを抱き上げる。 「あ、あなた、タルタロスで突然居なくなって、今までどこに居たの!」 「あ〜、思惑あっていなくなったわけじゃないけど、なんとなくあの空気が嫌いだったから、ね」 「軟弱だな」 「うう、教育方針間違えたかな〜」 ついさっき思ったこととは真逆じゃないか。 でもアッシュ、君の一言はバッチリ僕の心に突き刺さったよ。 「いくぞ」 行って先にユリアシティに入っていくアッシュ。 「ねえ、中にルークを寝かせられる場所ってあるかな」 尋ねれば戸惑いながらも答えてくれる。 「え、ええ。私の部屋を使えばいいと思うわ。ベッドも有るし、これからまた外殻大地に上るなら、あまり使わないと思うから」 「サンキュ〜。じゃあそうさせてもらうよ」 「ええ。じゃあ案内するわ」 ルーク。 早く目覚めて、そして気付いてごらん。 世界はぜんぜん優しくない。 けど人は君に厳しいばかりじゃないことを。 恥しがり屋が多くて大変だけど、こんな身近に、優しさはあるから。 君が責任転嫁の発言を繰り返すごとに傷つく人間が居るくらいには、君は間違いなくアッシュになったルークの代わりじゃなくて、一人の人間として受け入れられていたはずだから。 人じゃないと、たった一人の種族と言われたアッシュが、ルークと言う個として、今はアッシュという名前の付いた個として、生きているように。 君はこれからルークになればいい。 世界に一人、代わりなんて居ないルークに。 そしてアッシュの同胞として、互いしか分らない孤独を埋められるといい。 ね〜。 どうやらアッシュはルークの意識を回線を通じて取り込んだようだった。 この状態ってなんていうんだろう。 憑依? エルお姉ちゃんのジャンクションみたいなものかな〜。 今に最も近い過去、とか言うのにジャンクションすれば、今とほとんど変わらないし。 でももしかして背後霊みたいなものなのかもしれない。 アッシュはこの際だから徹底的に教えるつもりらしい。 ルークにはレプリカであることに変な劣等感は抱いて欲しくないけど、オリジナルよりは多少不安定でもある体だ。 第七音素で出来ている体は第七音素に引かれて乖離することが有るらしいから。 無自覚な無茶をされるよりは、きちんと自覚を持ってもらいたいとは思っている。 キリエが居なきゃ、いざ、って事が起きても助けられない可能性がある。 だから、自分の身体、というか存在について知っていて欲しいとは思う。 何度も言うけど、それで劣等感を抱いて欲しいわけじゃない。 レプリカと言うことも含めて、自分を受け止めて欲しい。 その事実はどうしたって、覆らないんだしね。 ナタリアに話しかけられて、どこかしどろもどろになっている。 割り切ったつもり、だったことが一つ露見したね? アッシュ。 ガンバレ青春。 「正体不明の鮮血のアッシュが、バチカルのお貴族様とはね。しかもやっぱり正体不明の覇者アーヴァインまで付いてくるし」 同じ神託の盾騎士団騎士団に所属している、と言う意識が気安さを生むのだろうか。 僕とアッシュを交互に見るアニス。 ふざけた調子も含んだ随分と乾いた声だった。 「お前も来るんだったな」 「私はイオン様についてくだけだもん」 「あなたはここに来るのは初めてでしたね」 アニスの傍らからイオンが言う。 それに少し考えてからアッシュは答えた。 「……ああ」 ユリアシティを詳しく知るわけではないが、魔界と言うそのものには以前一度来たことがあった。 僕が連れてきたからだけど。 ここ、を何処までの範囲に取るか迷ったんだろう。 魔界と言うなら否だけど、ユリアシティまで含めるなら初めてで間違いは無い。 本当はホドの穴から入ってきて、体力が尽きて逃げ帰るようにユリアロードを使ったんだけどね。 内部事情に詳しくは無いから。 「僕はこの街が好きではありません。この街の人々と僕とでは預言に対する考え方が違い過ぎますから」 「……俺もだ。預言は情報だ。それをどう使うかは、使う人間次第のはずだ」 「そういえば、タルタロスもアーヴァインが言っていたよね。西で死が読まれたら、おとなしく西に歩くのかって。私もそういわれたら東に行きたいけど……そもそも死預言なんて読まないんだから意味無いじゃん?」 「例え話だよ」 「わかってるよ〜」 僕よりももう少し道化のような仕草で肩をすくめるアニス。 うんざりした感じがひしひしと伝わってくる。 「あーあ。魔界って空の色はヤバめだし外は瘴気だらけだし、早く外殻大地に帰りた〜い」 「あははははは、帰ったら地上はヴァンの王国が出来ていたりしたら笑っちゃうよね〜」 「それは笑えないよ〜」 雑談に花を咲かせる。 ちょっと話をしただけだけど、アニスはちゃんと両親に愛されて育った子の様な気がした。 随分と苦労も背負っていそうだけど。 話していて面白い。 頭の回転の速い子だ。 険しい顔をしたガイラルディアがアッシュと、ついでに僕を睨んで言った。 「ルークはどうしてる」 「……寝ている。そのうち勝手に起きるだろう」 「そのうち、ね〜」 呟くと睨まれた。 嘘じゃないけど、そこはかとなく詐称の気配がするね。 アッシュがルークの意識を手放さない限り、ルークは目覚めない。 そのうちといえばそうだけど、ガイラルディアが思うだろう意味でのそのうちじゃないと思う。 「そうか……。一人で考えればルークも気付くだろう。自分がこれから何をすべきなのか」 「ふん、どうだかな」 そもそも一人じゃないわけだし。 こと有る事に脳内会議だよ。 凄いね、アッシュ。 でも油断すると一人で喋っている変人だよ? それにしても、ガイラルディアってやっぱりお人よしで苦労性だね。 アッシュの目を通して、耳を通してガイの様子が彼に伝わっているといい。 君は捨てられたわけじゃない。 こうやって誰かの目線を通して、自分以外の人間に語られる自分を知るっていうのは、とても貴重な機会だ。 ただちょ〜っと、タイミングが悪いかもしれないけど。 「おっと。俺は、お前のことは信用しちゃいない」 「それってさ〜、凄く勝手な台詞だと思うよ? アッシュが六神将だから、というより私怨じゃ〜ん?」 決まりわるそうに眼差しを彷徨わせるガイ。 僕はアッシュのほうがもっと不満そうにするかと思っていたんだけど、アッシュは眉間に皺を寄せることすらしなかった。 ガイラルディアと言う存在に対して、感情を動かすほどの関心もなくしてしまったのか? 違うね。 だってダアトでファブレ邸を録画した映像を見せていたとき、アッシュはルークとナタリアとガイ、ほとんどこの三人しか見ていなかった。 どういう心境なのかよく分らないけど、多分きっと悪い方じゃないと思いたい。 「分ってるさ、そんなこと……」 「ふ〜ん?」 「……好きにしろ」 あくまでもつつき倒すつもりだった僕と違ってアッシュはただ一言だけ。 言って立ち去るから僕もその後を追いかけた。 アッシュの中で、ルークは何を思っているんだろう。 アッシュの中で、アッシュの世界を共有して、彼らは何を話すだろう。 いつか、二人が兄弟のように共に立てたたらいいと、僕はそう思うんだ。 それはきっととても素敵なことだと思う。 だってさ、アッシュがルークの誕生を喜んだことを僕は知っているんだ。 そしてルークがアッシュの孤独を埋めてくれたことも、僕は知っているんだ。 アッシュもルークも、ガーデンの愛し子だ。 ルークに誓いは立てて無いけど、ルークもアッシュの同胞としてガーデンは見る。 もう少ししてルークが何か、僕がアッシュに魔女とガーデンの名にかけて誓うことを決意させたときのような、確固とした己と心を手に入れたら。 いつかはアッシュの同胞としてではなく、ルークに、君個人に対しても魔女とガーデンの名に掛けた誓いをする日が来るかもしれない。 タルタロスに乗り込んで、僕らは外殻大地に上った。 輝くセフィロト。 生命の木の名にふさわしく、まさに輝く大樹のようだった。 大地の下に根を張って、この大地を下から支えている。 生かすことは難しい人口の大樹。 けど、ホドやアクゼリュスのように、枯らすことは簡単だ。 僕は操縦を手伝わなかったんだけど、タルタロスの中では無事に登りきったことでテンションが上がっていた。 「ホント、よく戻って来られたね〜♪」 「……理論は間違っていなかった。成功するに決まっている」 アニスが青い空に声を上げれば、不機嫌そうにアッシュが答える。 バチカルよりマシでも、ダアトでもアニスみたいな人間は居なかったからね。 なんていうんだろう、こうキャピキャピした雰囲気が苦手みたいだった。 自分より下の世代に対してのコミュニケーションが苦手なのかな。 気が付いたのはたった今だよ。 「結果、上手くいっただけだろ。失敗したら、俺たちみんな死んでたかもしれない」 冷や水をかけるような声が響く。 ガイラルディア。 映像の中でも、いつでも穏やかな笑みを浮かべていた彼が、諍いの調停者でもあった彼が、率先して場の雰囲気を壊す発言をする。 しかも、アッシュをけなすような発言だ。 僕もアッシュも私怨だって分っているし、別にどうって思うことも無いけどナタリアは違うみたいだった。 キュって柳眉がつりあがる。 「ガイ、あなたル……いえ、アッシュに対して刺がありませんこと?」 「……こいつは失礼」 「そんな悪意交じりじゃ普通は謝罪って言わないよね〜?」 「ガイ……。またそんな……」 「ナタリア! 放っておけ。俺は別に構わない」 「アッシュ……」 アッシュの揺らぎのなさに、ナタリアは戸惑う。 あるいはもう少し揺らいでくれた方が安心するんだろう。 「それに、失敗しても――」 しん、とアッシュの言葉の続きを待って口が閉ざされる。 「誰も死なない。奴が居るからな」 ちらっと視線を向けられて、ぼくはおどけて口笛を吹く。 「褒めたって何もでないよ〜? でも、そうまで信頼されているならやっぱり嬉しいよね〜。まあね。言われるまでもなく死なせないけどさ〜」 信頼されているのが嬉しくて気分はホクホクだ。 それに、今のやり取り、アッシュが僕との間にある信頼関係を周囲に見せようとしていた。 自慢できる人間関係を築けていたのが再確認できて、僕の気分はぽかぽかだ。 世の中嬉しいことあるもんだよねぇ。 今アッシュが頭を抱えて何を話しているのかがすっごく気になるけど。 「それで? タルタロスをどこへつけるんだ?」 一通りのやり取りを無かったもののようにガイが言った。 向けられる感情はいいものとはいえ無いけど、ガイラルディアの中ではルークとアッシュは完全に別物になっているみたいだった。 ルークにとっては、嬉しいことだとおもうんだけどど〜だろう? 同一ではない、代わりじゃないということの証明には、ならないかな。 「ヴァンが頻繁にベルケンドの第一音機関研究所へ行っている。そこで情報を収集する」 「主席総長が?」 「俺はヴァンの目的を誤解していた。奴の本当の目的を知るためには奴の行動を洗う必要がある」 「私とイオン様はダアトに帰して欲しいんだけど」 「こちらの用が済めば帰してやる」 「導師イオンには、機会があれば会ってもらいたい人がいるんだ」 「僕に、ですか?」 「七人居た。僕の手元には三人が残った」 分るだろう? と無言で尋ねる。 零れ落ちそうなほどに目を見開いたイオン。 ちゃんと感づいてくれたみたいだ。 「自分の部下はどうしたんだ」 割り入ったガイラルディアの言葉の棘。 折り取って整形したくなってきた。 「部下達はすでに崩落の始末に行動している」 「いいじゃありませんの。わたくしたちだってヴァンの目的を知っておく必要があると思いますわ」 「ナタリアの言う通りです」 付いてくる、と言うことは了承、ってことでいいんだろう。 ベルケントじゃ会えない可能性もあるけど、というか残った二人はいまどこに居るんだろう? ノワールたちの行動について回っているならどこかにはいるんだろうけど……。 「……イオン様がそう言うなら協力しますけどぉ」 「私も知りたいことがありますからね。少しの間、アッシュに協力するつもりですよ」 「……」 みんなの賛同に、ガイだけは無言になる。 ヴァンみたいにさ、あのときぶっ倒しておけばよかった、って思うわけじゃないけど、僕の目から見たら恨みの対象を間違っていると思うから、なおさらこう、何かぐっと堪えなきゃならないものがこみ上げてくるんだよねぇ。 クリムゾンの大切なものを奪って、それを復讐に、ってことでアッシュ――クリムゾンの長子であるルークの命を狙って、憎んできたんだろうけど、復讐のループを止めるなにかルールにもあったよね? 復讐は一代まで。 かつ当人まで。 クリムゾンに対しての復讐は有る程度の正当性を得る。 けど、復讐の刃がその子どもに対して向かったとき、僕はそれを認めない。 対象がアッシュだから、じゃなくてさ。 親の行為で子どもが咎を受けなければならないなんて、馬鹿げている。 僕の目にはもう見事に完璧な私怨に映る。 憎む人間の血を絶やすこと、も復讐の形と言えばそうなんだろうし、憎む人間の血がこの世に残ることすら受け入れがたいものなのかもしれない。 だからと言って認めることは、僕には絶対にできない。 「さ〜って、いこうか? ベルケンドはここから東だよ〜」 どうにもビシッと決めるのは、苦手なんだよね。 大まかな方向なら、タルタロスは自動走行できるらしい。 障害物の無い広い大海原だからこそともいえるだろうね。 陸地じゃいくらあたり一面大草原で障害物が無いように思えても、この陸艦で走行するならもう少し注意を払わないとこける。 「ベルケンドに行けば、主席総長の目的ってのが分かるのかな〜?」 僕のお手製のマフィンを食べながらアニスが言う。 「どうでしょう。ただ、他に手がかりがありませんし」 こっちも僕のお手製のマフィンを上品にほおばりながら言うイオン。 少し困ったように微笑むのが彼の特徴かな。 きっと同胞の満面の笑顔を見たら、ビックリするだろう。 天真爛漫、そういう笑い方をする。 自分の境遇を判った上で。 ルークにも、会わせたいかな。 「そうですね。まずはベルケンドの第一音機関研究所へ行ってみるしかありません」 「ああ。奴が頻繁に出入りしているからには、何か秘密があるはずだ」 「そうですわね。きっと手がかりが見つかりますわ」 「……そう上手くいくかねぇ」 また響く、冷めた声。 「ガイ! なんですの、その態度は……」 「ナタリア! 放っておけ」 「十四年、だ。ねえガイラルディア。十四年、他人の願いも汲み取れず、自分の立ち居地も決められずに今もこうしてふらふらしている。しかも私怨に駆られての悪態だもん。みっともないよ〜?」 「あんた――」 キチリ、とガイラルディアの手の中で握られた刀のつばが音を立てる。 けどそのときには、僕の譜銃がガイラルディアの頭部に押し付けられていた。 「BANG」 口で音を立てながら、かちりと引き金を引く。 実弾銃じゃこういう真似はできない。 「僕もアッシュも知ってるよ、君を。宣言しよう、ガイ――ガイ・セシル」 ガイラルディアからガルディオスまでフルネームで言いかけて、やめる。 死霊使いなら気が付いていそうだけど、まだ知らない人間もいるはずだ。 それに、彼が敏い人間であるなら、言い躊躇ったところで気付くだろう。 「アッシュにも、もちろんルークにも、二人に害をなすなら、僕らはもう容赦しない。十四年、君はただ見逃されてきただけだ」 「それはどういうことですの?」 ガイは舌打ちをして、アーヴァインは曖昧に言葉を濁した。 出て行ったのはアッシュだった。 「ルークのことが気になって仕方ないんだろう? 本物と偽者、って括られるのが気に入らないんだろう? ルークが目覚めたら、ティア以外皆居なくなっていて、見捨てられたって思うかもしれないね。それに、君のことだから、自分が側に居てやら無いと、とでも思っているんじゃないのかな。自惚れすぎ」 「わかってるさ」 「本当に?」 本当に、理解しているんだろうか。 アッシュとルークを混同しないのはいいことだと思う。 けど、アッシュとルークが別人になってしまったことを知った今でも、ルークがレプリカではなく憎むべきクリムゾンの子どもだと認識していた頃の感情を捨てきれずに居る。 二つの切り分けた存在の上に、重ねてはならない感情を重ねている。 ルークを心配しているのに、憎んでいる。 ルークも、アッシュの完全同位体でアッシュのレプリカであると言うことは、クリムゾンの血を引いていると言っても間違いではないけど。 ほんとう、めんどくさいね、心は。 「ルークがあんなふうに育ってしまった責任は、俺にもある。ナタリア、君にもだ」 「ずっと見ていたよ僕たちは。ルークが育っていく様子を。ガイも、ナタリアも、ルークにいつか記憶を取り戻すことを前提に、本当に必要なことは何も教えてこなかった。早く記憶を取り戻せ、ずっとそう言ってきたよね」 項垂れるナタリア。 「そう……ですわね。そうかもしれません」 「ルークにはたしかに支えが必要だろうね。けど今じゃないよ」 「どういうことですの?」 「さあ?」 道化のように肩をすくめて首を傾げる。 「君たちは存在を殺すのがとても上手い。七年間忘れ去られていたアッシュ。今はレプリカとしてオリジナルに塗りつぶされようとしているルーク。ガイ。君も、オリジナルが現れて嬉しかったんじゃないの? あのルークで無いなら、躊躇わなくていいって、思ったんじゃないの?」 残酷な言葉達がすらすらと口を出る。 アッシュにとっても、ルークにとっても酷だろう。 ガイラルディアのことだって僕は嫌いじゃないけど、こうやってふらふらしているのは好きじゃない。 迷うなとは言わないけど、彼の迷い方は今のままじゃどんな結論を出しても落ちるところまで落ちるしかないような迷いかただ。 それならいっそ止めを刺してやろうかなんて大きなお世話だろうけど。 「でもアッシュはルークじゃなくなった。クリムゾンの嫡子じゃない。血は引いていても捨て子だよ? クリムゾンはアッシュもルークも、死を承知でアクゼリュスに送るために育ててきていた。ましてアッシュは今ルークじゃない。今は爵位の継承権も無い。すべて、レプリカルークが持っていった。姿かたち、地位、幼馴染、両親、安全な住処、傷つけられることの無い世界。その間アッシュは体も心も壊してしまう薬を使われて暗い部屋と人体実験。それに対していいざまだ、て唾を吐きかけられる人間なら、ルークを心配知る資格もないよ」 たとえ彼が、アッシュの血を望んでいるのだとしても、単純にそれとこれとは別に話だと思う。 「ルークもアッシュも、ルークじゃなかったしルークじゃなくなった。アッシュに至ってはファブレですらないのに? 君が憎くて殺したいのは一体誰さ。自分の心にくらいさっさと決着を付けて見せてよ、かっこ悪い。復讐者? それとも幼馴染? 君は何なのさ。死者の最後の願いくらい、聞き届けられる人間になってごらんよ」 「あんたは、何処まで知っているんだ」 「さあ?」 「なぁ……ならあんたは、どうしてルークの所に来なかったんだ!」 義憤に駆られて気炎を上げる。 見ようと思えば僕がアッシュを贔屓しているように――っていうか実際しているんだけど。 つまり、同じように守ると言ったならこれはえこひいきじゃないか、って話だよね? 答えは一つだ。 「僕はクリムゾンが嫌いだ」 「へ?」 「インゴベルドも嫌いだよ」 「ええ?」 「ついでにヴァンも大嫌いだ」 「えええ!!」 いちいち入るアニスの合いの手が微妙に可愛い。 「僕はアッシュもルークも大切だよ。結果としてアッシュの人格と健康を守るためにダアトに居なければならなかっただけだよ。キムラスカなら、飼い殺し状態とは言え衣食住に困ることも無いし、時々様子を見に行く限りじゃ薬物混入とか言うことも無いみたいだったし」 「それマジ?」 「マジマジ〜。へたにアッシュをバチカルに帰せば、ルークがレプリカと言うことが早い段階でばれただろうからね。そうなれば、都合が悪いからって処分されたか、そうじゃなくても本格的にアッシュの身代わりとしてアクゼリュスで殺されるために育てられることになったと思うよ? で、結果として僕はアッシュもルークも助けて、アクゼリュスで死なせないで、血の父親であるクリムゾンにいつか嫌味を言うのが目標」 「わ〜お」 アニスの合いの手が入ったとたんに話の雰囲気が軽くなる。 ぼくも、道化を演じている方がいい。 道化を演じていられるときの方がいい。 なんとなく思ったけど、この子も道化を演じている人間なのかもしれない。 ガイに押し付けていた銃を離して、踵を返す。 ブリッジの外へ向かって歩を進めた。 彼の瞳の暗い炎が儚くゆれる。 決意の無い復讐者ほど、みっともないものは無い。 外に出れば、不機嫌そうにアッシュが腕を組んで立っていた。 自然に並んで歩き始めると、先に話しかけられた。 「余計なことまで喋るな」 「あれ? 聞こえていたかな〜」 「わざとらしい。こいつが煩い」 とんとん、と自分の頭を指差すアッシュ。 聞こえていたなら、まあ随分騒ぐことは予想できるけど。 なんだか艦橋の方でもガイとナタリアで喧々囂々やってるし、アッシュの頭の中も似たような状況なのかもしれないね。 何を話しているんだろうね。 少なくとも有る程度の思考は筒抜けになると思うから、短い期間に相互理解を深めるのに有効かな? と思ってみる。 実際のところは知らないけど。 深く知りすぎて相互嫌悪とか同族嫌悪みたいなこともあるかも知れないし。 「余計なこと、って言うのは分っていたんだけど……どうにもこうにもさ、チャンスは幾らでもあったのに、今かまだかって迷ってばかりで、特に時間をかけて念入りに工作している、って訳でも無い辺りが煮え切らないなぁって。煮えきられても困るんだけどさ〜」 見ていて、ああ、もうどっちなのさ! っていいたくなることしきりだったけど、だからって当時は決断を下されていても困るわけで。 あ〜あ〜、難しいなぁ、ホント。 「ルークの様子はどうだい?」 と尋ねれば、眉間に皺を寄せて言い渋る。 「はっ、はははっ……まあ、いいや」 とても、とてもとてもものすごーっく! アッシュの脳内が気になってしょうがないけど聞くのはやめる。 「ルーク。初めての挨拶がこんな形でなんだとは思うけど、はじめまして、こんにちわ」 アッシュの中に居るルークに、話しかける。 「僕はアーヴァイン・キニアス。ガーデンのSeedだよ」 「……一応、挨拶しているらしいぞ?」 「ははは、うん」 アッシュの中にだけ響く声で、僕に挨拶を返してくれたらしい。 多分挨拶そのものも、ルークが発した疑問とかもだいぶ省略されていそうな気配がするけど。 「まずは何を言おうかなってずっと思っていたんだ。結局こんな形になっちゃったけど。まずはおめでとう、かな。君もアッシュも、無事に一つの死預言を潜り抜けた。生きていてくれてありがとう、ってね」 「……」 「変な体験だけど、めったに無い体験だと思って、いっぱい世界を見てごらん。今回のやり方は無理やりだったけど、誰かの目線になって世界を見るなんて、他の人にはできない体験だよ? 君とアッシュだけの特別なことだから」 特別なこと。 エルお姉ちゃんも居ないこの世界じゃ、本当に希少な経験だ。 「僕は、いつか君とアッシュがまるで兄弟のようにこの世界の上で共に立てたらいいと、そう思っている。君はどうかな?」 「……ふん」 「あはは」 「うるさい!」 アッシュが照れた。 そう悪くは無い関係を築いて居るみたいで安心する。 いつか、兄弟のように。 「僕はずっとアッシュに対して兄か父親のようなつもりで接してきたし、君は知らないだろうけど僕はずっと君の成長も見続けてきたんだ。図々しいかもしれないけど、君ともそんな風に触れ合えたらいいと思っている。父親か兄に立候補、って所かな?」 面白くなさそうに表情を歪めるアッシュ。 ほんと、アッシュの中でルークが何を思うのか知ることができないのが惜しいね。 だから、ルークが自分で歩き始めたら、再び出会うことがあったなら、その時はたくさんおしゃべりをしようと思う。 「ちょっと違う視点で世界を見ておいでよ。自分の足で立ち上がることが出来たら、その時はきっと君の前にも誓約者を持たないSeedが現れて、誓いを立てる日が来るかもしれない。十秒後か、十年後か分らないけどね」 「……マフィンが、美味かったそうだ」 「そう? じゃあ今度は君の為に作るよ。美味しい紅茶も用意しておくから、楽しみにしていてよね〜」 「……ああ」 別れ際に、問いかけられる。 「あんたは俺を責めないのか、だそうだぞ」 その問いに、僕は少し考える。 「う〜ん……、責めない、って言うのとはちょっと違うかな」 「何がだ?」 「責める必要が無かったんだよ。あの責任転嫁の発言は痛かったけど、君は自分の罪を知って泣いていた。その心でね。きちんと自覚する人間に、僕はそれ以上いう意味が無かっただけだよ」 意思の疎通がされているのか無いのか、分らない不思議な会話はここで終わった。 僕はとりあえずここで分かれてフィールに一度会いに行こうと思う。 イオンに会わせたい人が居る、って言ったけど、今回はどうなんだろう。 ダアト以外を廻っていれば、いつか運がよければ、って感じだから。 誘っておいてなんだけどあまり気にしないことにした。 キリエがいつかこちらの世界にきたら、若返り系の念具を使ってルークに体験することの出来なかった子供の体、って言うやつを体験させてみるのも面白いかもしれない。 彼らの上に詠まれた死の預言が完全に払拭されたのか、分らない。 けど、これからも守りたいと思う。 これからも、もっとたくさんの時間をいろいろなことを感じながら生きていて欲しいと思う。 二人共に。 「俺はおりるぜ」 研究所の前で、いざいかんワイヨン鏡窟と言うときに、ガイが言った。 意外そうな顔をしたものは何名かいたが、そうでないものも約二名。 意外ではない顔をしたものも居たが、それでも驚きを見せる皆。 そんな中、クツクツとアッシュが笑う。 「そんなにあのレプリカが気になるか」 「……ルークが心配なんでね。あいつを迎えに言ってやらないとな」 「呆れた! あんな馬鹿ほっとけばいいのに」 「馬鹿だから俺が居ないと心配なんだよ。それにあいつなら……立ち直れると俺は信じてる」 「ガイ! あなたはルークの従者で親友ではありませんか。本物のルークはここに居ますのよ」 「本物のルークはこいつだろうさ。だけど、……俺の親友はあの馬鹿のほうなんだよ」 馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿酷い言われようであるが、かつての彼は確かにそれを否定できない馬鹿さがあった。 阿呆ではなく、馬鹿なのである。 これだけ馬鹿だ馬鹿だといわれてそれでも《ありがとう、ガイ……》などとレプリカが言うものだから、思わずアッシュの眉根にも皺がよるというものだった。 「ナタリア」 「何ですの?」 「俺は過去を否定するつもりはない。俺は確かに過去にルークだった。だが今はアッシュだ。七年、こいつが時間を共にしたルークはあいつ一人だ」 「ですが――」 「どちらの名で呼ぼうか迷うよりずっといい」 その視線を一瞬だけナタリアに。 「……ダアトの北西にアラミス湧水洞って場所がある。もしも――ルークがこの外殻大地へ戻ってくるなら、そこを通る筈だ」 「悪いな、アッシュ」 「……フン。お前があいつを選ぶのは分かってたさ」 「まあ――それだけって訳でもないんだけどな」 「俺がダアトに攫われたとき――あいつが一人付いてきた。ルークがユリアシィから目覚めるときには、一人くらい居てもいいだろう」 道具袋に手を入れて、預けられた小物を取り出すアッシュ。 タルタロスでの別れ際に預けられたものだった。 コートの内ポケットに手を入れて、取り出したのは目にルビーを嵌め込んだ銀細工のライオン。 「これをルークに渡しておいてくれ」 「なんだ? これは」 「ライオンハートというらしい。アーヴァインの仲間の人間が作った道具だそうだ。ライオンには勇気や強者と言う意味があるらしい」 現実のライオンという生命体の私生活については見ない振りをして。 「かつて人間がこの動物に願った心が篭められている、と言う話だ」 「わ〜、なんか似合わないほどロマンチック〜」 「うるせぇ」 「お、自覚ありか」 百獣の王と呼び習わし、勇気、勇猛の象徴とした。 王者の風格を持ち、数多の物語を持つ獣。 アルティミシアが最後の戦いのとき、こころに思い描く最も強いもの、と称して呼び出したグリーヴァ――アーヴァインが後に聞いたところスコールの思い描くライオンだったそれは、間違いなく、確かに強かった。 彼らSeedはそれすらも下してしまったのだけれど。 しげしげと眺めているガイ。 長く位の高い貴族の屋敷で使用人をしていた事と、元が貴族であることから目は肥えている。 その彼をして、感嘆せざるを得ない一品だった。 「それで?」 「紐は適当に用意しろ」 「だから結局なんなんだ?」 「下手なキャパシティコアよりよっぽど、効果がある」 ふん、とあらぬ方向を見るアッシュ。 「それがあれば、奴等Seedの加護を得られるらしい。無条件でな」 サウザンドの名を冠するようになったSeedたちにとって、そのライオンに対する認識は、目印。 異世界に散らばる顔も知らない誓約者。 誰かの誓約者を全員で守る。 異世界旅行は、特に最初の一回はランダムツアーだ。 そして次にその世界に行くときに、必ず同じ人間が行くとは限らない。 たとえ、誰かの誓約者の事を次の誰かが知らなくても、それを持っている事で証となり異世界渡りをするほかのSeedの守護を自動的に手に入れられる。 誰かを守るために、と言うのは今のSeed、中でも語り草となっている伝説のSeedとその仲間たちにとっては大きな行動理念の一つとなっている。 最後に求める事はリノアの開放。 それは変わらない。 けれど、強大なものとなってしまった力の使い方、として己達を戒める意味でも、いつか、何処へ行っても、守るための意思であろうとする。 それが誓約。 伝説となったSeedたちは、誓いを立てる。 『魔女とガーデンの名にかけて』 と。 破ったところで何のペナルティもない。 真実ただの言葉でしかない。 だからこそ、彼らは何よりも価値のあるものとしてその言葉を守り抜こうとする。 そのために念具を駆使することも厭わない。 このライオン、女性が親指と人差し指で輪を作ったものより小さなものだが、掛かる資金は半端じゃない。 所持者にそうとは知らせずに、所持者を守る。 「……アッシュは、そのSeedとやらじゃないんだよな」 「Seedになれるだけの教育はうけて来たが、Seedじゃない」 Seedは魔女と庭の守護者だ。 ガーデンやSeedの仕組みの中に彼を入れて考えるなら、生い立ちや異端性といい、アッシュもルークもSeedと言うよりは守られる魔女の側に立つ人間だろう。 例え本人たちがどれほど強くなっても。 Seedになろうとしない限り、彼らは庭の庇護を受ける対象だ。 ルークは、アーヴァインにとっての誓約者自身ではないが、この世で唯一の異端であったはずのアッシュの同胞だと言うのなら、それを受ける資格は十分にある。 「……わかった。渡しておくよ」 「感謝する」 駆け去っていくガイの背中を見送っていたら、ジェイドが話題を振った。 「彼は――アーヴァインは、あなたの影なのですか?」 「影? ふざけるな。影ならもっといいようにこき使ってやる。六神将覇者アーヴァインとまで名を広めた人間に影なんか勤まると思うのか」 「それはそうなんですがね」 隠すつもりがあるのならともかく、彼にはあからさまなまでに隠す様子が見受けられない。 タルタロスで、廃工場を抜けたところで、ザオ遺跡で、そしてアクゼリュスで。 アッシュの居るいたるところで見かけ、時に刃を交わし――まあ、勝てなかったのだが――実感として影と言うには自由奔放すぎるだろう。 助けろと言うまで主を助けない影なんて言語道断だ。 禁じられているわけでもないだろうに。 アクゼリュスにいたっては、アッシュを連れ去ろうとしていた魔鳥を譜銃で叩き落して駆けつけもせず、動けないルークを抱えてティアの譜歌の効果範囲に運ぶ始末。 その後気が付けばいなくなっていた彼とは、ユリアシティで再会した。 「まあ、いいでしょう」 疑問は丸無げだが、今拾ってもしょうがない疑問もある。 |