押し出し式ところてん? 後戻りは出来ないって?




 毎日毎日、弟子入り先を見誤ったかと思うほどハードな修行をさせられた。

 チキンハートな師匠なのに、修行は実戦タイプ。

 徹底的に凝を仕込まれて、堅、硬、流による攻坊力の移動だけで組み手、と言うには過激な試合を繰返す。

 まあ、この人は嫌だ!! といったらほかに人がいないので、念を使えるだけでなく、実戦で使える念使いになるにはいい師匠なのだろう。

 二人の兄弟子も、念使いとしてはともかく、武道家としてのスキルは高い。

 この人たちと組み手をすると、結構為になる。

 師匠の修行もあるけど、このクラピカボディ、それなりに才覚はあるようだった。

 そのうち協専ハンターの師匠の仕事をときどき手伝ったりするようになると、契約金の一部がもらえるようになった。

 嬉しかった。

 チキンハートな師匠のおかげで後々誰か――主に犯罪者に悪意を抱かれるような仕事ではなかったというのも大きい。

 見たとこ師匠結構強いと思うのだが。








 ときどき、今のクラピカの年齢から考えて、今ごろ天空闘技場にいったら、間違って会えるかな、とか思う。

 そしたら友達になりたいな、とか。

 傍に執事の一人くらいつけさせてそうだけど。

 だったら無理かなぁ、とか。

 あんまり疲れるものだから、そんな事しか考えなくなっていたある日。

 私はおっぽり出された。

 失礼、卒業を言い渡された。




 なんでさ。




 先に弟子入りしていた、ハンター証を持つ二人の兄弟子よりも早い。

 たしかに、放出系の弟子はともかく、見た目どう見ても強化系の筋肉マン、その実具現化系の兄弟子は、むしろ哀れなほど念に才能がなかったけど。

 ゴンやキルアじゃあるまいし。







   見た目は子供、頭脳は大人、その名はコンクリートジャングルからの憑依系、佐藤沙玖夜!!







 な私としては、十三歳は十分に何者かの庇護下にある年齢。

 できれば独立したくなかった。

 が、そこでふと思いつく。

 この世界で生きるからには幻影旅団よりも出会いたくない生物。

 キメラアント編をキャンセルする方法を。

 お金を稼ごう。

 人を雇おう。

 出るつもりでいるゴンやキルアもいるハンター試験は、なんとネテロ会長が姿をあらわす。

 面接もある。

 ここは恐ろしく力がものをいう世界。

 それは戦う力だけでなく、権力然り、マネーの力然り。

 お金があれば何でもできる!! とまでは行かないが、近いものはある。

 そしてキメラアントの危険性は、第一種隔離指定生物、だったかな?

 それと、摂食交配という特徴を持つことからもわかる。

 人の特徴を取り込めば、念に至るまで遠くはない。

 そして野生の生き物とは大概にして人より優れているものだ。

 弱った女王でもただの人間なら殺せるだろう。

 野性の体と人の知恵と、そして念。

 その危険性は、ハンター協会会長ともあろう人なら、分るはず、だと思いたい。

 気が速い気はするが、ハンター試験のときにでも話を持ち出せば、ノブって言う人やモラウ? って言う人とかに繋ぎをつけてもらえないだろうか。

 あの煙の人の念能力。

 あの人が出向けばきっと何とかなる。

 索敵から戦闘、捕縛まで。

 ドンとこいな感じが素敵な念だ。



 もう教える事はないらしいが、まだいっしょに行動するかどうかと尋ねてくる師匠に、私はゆっくり頭を下げた。

「師匠、今まで有難うございました。私を強くしてくださって」

「ん、む? そうかそうか」

 師匠はどこか居心地悪げに照れ隠し。

 こんなに見た目で分る人だ。絶対強化系だと思っていたら、実は放出系だった。

   近いからいいけど。

 明確に決別の意を露にしたわけじゃないが、雰囲気は別れのものだ。

「実は、天空闘技場に行こうかと思っています」

「どんな場所かしってんのか?」

「格闘家のメッカ、野蛮人の聖地。二百階以上には念使いの巣食う場所」

「そこまで知ってて――」

 師匠が顔をしかめる。

「訳あってお金が必要なのです。数十億、数百億単位のお金が」

 師匠の表情が唖然としたものに変わる。

「師匠に卒業を言い渡されても、対外的に私はまだ子供です」

 中身が二十二歳で、ここに来て一年くらいだから、だいたい二十三歳?

 ああ、そうか。クラピカとはちょうど十歳、一回り違うんだ。

「仕事を求めてもろくな仕事があるとは思えませんし、短期間でそれだけ稼ぐだけの仕事もないでしょう。幸い、戦い方は教わりました。当分の間は天空闘技場にいようと思っています」

 お世話になりました、と頭を下げると、師匠はどこか涙ぐんでホームコードと携帯の番号を書いた紙をくれた。

 感激屋さんめ。

 二人の兄弟子もそれぞれにホームコードと携帯の番号を私にくれた。

 とっても申し訳ない言い分、正直役に立つとは思えないが、気持ちは嬉しい。

 私は再び頭を下げて、約一年、お世話になった師匠の元をあとにした。







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