あ〜あ、結局そうなるか。
本格的に念の修行に入って、水見式をして。
案の定、私は具現化系だった。
はじめて物質化したのは――鎖だった。
これはおそらく私の中にあるクラピカに対するイメージが原因だろうと推測する。
クラピカと言えばチェーンジェイル。
まあ、戦闘の手段としては有効だし、強制的に相手を絶状態にできる、しかも行動不能なら、殺さずして勝てそうだから歓迎したが。
蜘蛛以外に使わない、や、ジャッジメントチェーンを自分に刺していないからあのクラピカのものより随分威力は落ちるんだろうけど、そこは歳月でカバーして、漫画本編に入るまでにそれなりに仕上げるつもりだ。
そこまでは良かったんだが。
最近、ちょっとした問題が起きている。
夢を見るのだ。
それは、具現化系が何かを具現化する前兆のような、はっきりとした夢。
何かを具現化できるなら、それは喜ぶべきかも知れない。
夢で見るもの。
白く鋭く、折り目も正しいソレ。
だが私は、それは絶対に嫌だった。
夢で見るもの。
その名は。
ハリセンといった。
師匠や二人の兄弟子を見ていると、あんまりにもハリセンが欲しくなるからかも知れない。
というかソレしか原因が思い当たらない。
うら若き十二歳の少年(中身女)を脇に置き、大声で下ネタを繰り出す彼らを見ていると、どうしてもハリセンでど突いてやりたくなるのだ。
巨大ハリセンに何か特殊効果をつけてそれを振り回して戦うのもいいかなぁ、と思ったけど。
殺しを忌避する私には、ちょうどいいようにも思えた。
見るからに殺傷力は無さそうだし、殺傷力をイメージできないと言う事はないも同然である。
相手を戦闘不能にするイメージだけはなんとか括り付けなければ逆に殺されてしまうが。
だがそれでは、私に突っ込み属性が確定されてしまう!!
考えに考えた末、間違ってもハリセンが具現化される前に、私はそれを似たような何かと摩り替えることにした。
蛇腹に開く。
その名は。
扇、それも舞扇といった。
どうせなら、巨大なハリセンでばっさばっさと張り倒すよりも、ちょっと大きめな扇で優雅に薙ぎ倒したい。
イメージは真・三国無双の大橋と小橋。
個人的には大橋のほうが技の発動後の隙が少ないし、優雅で好き。
小橋は可愛いが、最近のは特にロリコンに走りすぎな気がする。
周瑜さま、犯罪ですよ?
努力は実ったと言えよう。
多大なる努力と、必死の思いの上に。
ハリセンの夢を忘れ、ギャグ属性と突っ込み属性を回避する為に、私はとうとう扇の夢を見、ソレを現実とするに至った。
基本的なサイズは箸二本を縦に並べたほどの長さの、扇の一般常識からはかなり長いソレ。
構造そのものはイメージに使った扇そのものだが、骨組みの材質は一見すると不明。
地紙は薄い墨汁を垂らしたような黒を基本に銀が撒かれた随分大人びすぎたデザインの物。
色は抜けきらない基本心理だろう。
普段着の黒に合わせて。
それこそ大橋、小橋ならともかく、私にアレだけ派手な扇は使えない。
銀はそれでも欲しい遊び心。
随分と私も立ち直ってきたようで、最近はアクセサリにも目が向くようになった。
やっぱり黒に似合うのはシルバーアクセサリ。
スコールみたいに獅子のあしらわれたアクセもいいかなって。
お気に入りは、銀獅子のチョーカー。
折りたたんで殴れば鈍器、開いて振りぬけば、大小橋のように切る事もできる。
もちろん普通の扇のように扇ぐことも。
基本的に私の想像で成る物だから、大きさぐらいは自由に変えられる。
それを二つ、具現化することに成功した。
まさに大小橋。
ギャグ&突っ込み属性から開放されたと思った私は浮かれていた。
悪夢は終わっていなかった。
その悪夢の名もまた、ハリセンといった。
結局ハリセンは具現化された。
根底の欲求には逆らえないと言う事か。
大嫌いな努力して努力して努力して、根性の末に二つの舞扇の具現化に成功した直後から、ハリセンは再び夢に現れ始め、それから間もなく憎ったらしくなるほどあっさりと巨大ハリセンは具現化された。
ボケにハリセンで突っ込んで、「あんたそれ何処から出したの!!」はライトノベルにおけるツッコミの基本だ。
現実にはありえないはずだったそれを現実としてしまう私。
それは諦めの境地にも似ていた。
いや、そのものだった。
それから数時間に渡り、私は初めて具現化した巨大ハリセンを片手に途方にくれた。
なぜか覗いている師匠や兄弟子の視線も、今の私には気になる物では無かった。
どうせなら、ピコハンも欲しいなぁ。
特殊効果はテイルズ系統で。
「ピコハン」
ってミントが言うのが好きだったし。
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