キ、キ、きやぁあ? ……やだよもう。




 訓練は厳しい物でした。

 危機は日常にだけあるのではないと知りました。

 クラピーパパンママン、そしてクラピー。

 わたしは、今まで辛うじて避けえたオカマの汚名を彼にかぶせてしまうかもしれません。

 その時はどうぞ許してください。

 もうだめだと思ったらグリードアイランドで性転換してきます。




 弟子入りしてちょっとしてからの訓練が始まってからずっと、私はある一つの事象変異に悩まされている。

 単純に言えば曰く私と言う女性からクラピカと言う男性性への性転換って言うやつなんだけど、ともなって今までの当たり前が当たり前でなくなること、かな。

 もっと単純に言えば、クラピカボディへの望まぬオカマの汚名を避けるために日常会話すら抑制している。

 これがとても面倒くさい。




 ウサギ取とか、魚釣りとかやらされて、格闘の訓練を付けてくれる、って聞いたときにはやだなぁ、痛いの。と思った。

 やだなぁ。痛いの。男らしい悲鳴を上げられたらいいけど、なんか「キャー!」とか言っちゃいそうだし。

「ほら右! 次は左! 反応が鈍いぞ!!」

「っはい!!」

 師匠自身はきっとダルダルで稽古しているんだろう。

 保守的な師匠で良かったと思う。

 まずは身を守る事から! と言うことで、攻撃するから全部避けろと言われた。

 無理です、師匠。

 次の一撃を回避できなくてとりあえずかざした腕に重い衝撃が来る。

 回避できないと思うから当たるんだ!  とか言う熱血師匠じゃないのはありがたいけど、問題はそこじゃなかったのだ。

「っっ!!」

 悲鳴を堪えて私は吹き飛ぶ。

 念は使っていないんだろうけど、基本的に念使いのボディは超合金製だと思う。

 木に叩きつけられて、起き上がれないでいる私を師匠が見る。

 痛みに身を捩る私は、何とか悲鳴を押し殺した事に安堵していた。

 いますっごくあぶなかった。

 キャー! なんて言って許されるのは、やっぱり女性だけだと思う。

 キャ、とか、キャア! とか、どんなに外見が美少年でも男がキャー! はだめだ。

 訓練のほとんどが実は「キャー!!」と言わないために意識を割いている。

 だめだ。私は自分に「キャー!!」を許容できない。

 痛みから意識を逸らすようにそんなことを強く考えながらふと師匠を見ると、なんか凄く満足そうな目をしていた。

 ……師匠。

 あなたはもしかしてドSだったりするんですか!?

 いたいけな美少年の弟子を苛めて、というか弟子が痛みを堪えているのを見てそんなに満足そうな顔をしているなんて。

 なんかすっごく嫌です師匠。

 そんな師匠に天誅を!!

 と思ってキッと睨んで飛び掛れば、まあ叶うはずもないんだよな、と再確認した。

 今なら鼻くそほじっている師匠にも負けるだろうしね。

 キャァ! の、キ、まで出た所で何とか残りを飲み込んで、そのせいでやっぱり噛み殺した苦鳴になる。

 それでも、私は言わないんだ!

 この身がクラピカである限り!!




 でも師匠。

 弟子を苛めて喜ぶ趣味があったなんて、今回ちょっと見損ないました。

 しかも二人の兄弟子達が苦悶しているときは心底うざったそうにしてますよね?

 たしかに見苦しいのは分りますけど……。

 彼らと私とではあからさまに反応が違うと思う。

 つまり師匠は人を苛めて喜ぶ趣味があるだけでなくそれが紅顔の美少年に対してのみと言う更なる特殊性癖があるということに!?




 ――いつか天誅する。







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