師匠、あなたはもしかして……




 それからまた一週間くらい。

 今師匠が不信なくらいじーっと私を見てる。

 なんですか、師匠。

 もしやペドフィリアの気が!!

 いくらクラピカが美人さんだからって!!







  多分気付かれてないつもりだと思う。

 絶、してるんだろうね。

 とっても気配が薄い。

 でもさぁ、姿が消えるわけじゃないんだよね。




 見つけたのは偶然だったけど。

 薪割してて、疲れたからちょっと顔を上げたら目の前の木から足が生えてた。

 うかつだと思うよ?

 念だって万能じゃない。

 なに考えてんだか知らないけど、師匠じゃなかったら不審者だ。

 クラピカも、十二歳、ちょうど可愛い盛りだし。

 なに考えてんだかわかんないのは、私も一緒だけどね。

 何せ喋ったらまだ女言葉が出てくるからさ。

 私は女だけど男な訳で。

 自称が”私”でも可笑しくない美形さんだから助かってるけど、男の体で普通に喋ってると、語尾がどうしてもカマ臭い。

 字面で読めば問題なくても、ニュアンスが、ね。女っぽいって言うより、声のせいでカマ臭い。

 で、私はカマの名は背負いたくない。

 で、しぜんーんと、言葉が少なくなる。

 喋る前に一通り言う事を、女言葉にならないように考えていると、大抵言う前に見捨てられちゃうんだよね。

「いいって、むりするな」

って。

 そんなに頭悪そうに見えるのかなぁ、私。

 見た目は中味に引きずられる、その典型例かしら。

 いくらクラピカの外見が良くっても中身が私じゃたかが知れてるわ。





 でさ、当分は、気にしないで薪割してたんだけど。

 私ってばそんなに気が長いほうじゃないし。

 いい加減見られながらって言うのが嫌になってきた。

 手斧を下ろしてハイ、十秒深呼吸ー。

 その間にいなくならなかったら声掛ける。









 で。

 結局たっぷりと十二秒かけて深呼吸しても居やがりました。

 我が師匠といえど、尊敬できる行動にあらず!!



天誅〜!!



 と言いたいが、それができるだけの実力はない。

 しゃ〜ないね〜。

  私は汗を拭きつつ、真っ向から師匠を見上げた。

「師匠、さっきからずっと見ているようですが、何か御用なんですか」

 眼差しに、変態の汚名を被せつつ。

 師匠、あなたはペド野郎なんですか?









 決まりの悪そうな顔をしながら師匠が木から降りてくる。

 何か話しがありそうな気がしたので、私も服の埃を払いながら姿勢を整える。

 黒い服は埃が目立つのだ。

 私個人としては蒼が好きなのだが、黒はまあ、喪服だ。

 服などの生活必需品はありがたいことに師匠が購入してくれるのだが、適う限り私は黒の服を選ぶ。



 クラピカへの、喪を現して。





 クルタ族のためではない。

 正直言って、一族というものが滅んだ事に対する感慨は何もない。

 クラピカが埋葬を終えた辺りでこうなってしまったために、なにひとつの残虐映像も、亡骸も見ていない。

 夜な夜な一族の人間の虚ろな眼窩が――、と言う事もまったくないのだ。



  クラピカの肉体は死んでいない。

 だが私がここにいると言うことは、私は既に一個の人格を殺しているのだ。

 私なりのけじめだ。

 師匠や兄弟子に事情を説明できないのは切ないが。



「ああ、その、だな」

 何を話すものかとじっと待つ。

「あー」

 じっと待つ。

「そのー」

 じっと。

「――いや、なんでもないんだ。邪魔して悪かったな」

 結局師匠は何も話さずいってしまった。

 なんだったんでしょうね?

 あんまり薪割りの姿勢がなってないから、悲しすぎて注意も出来なかったとか!!

 そうだったら言ってくれなきゃわかんないじゃないですか、師匠〜!!







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